【ジュネーブ=細川倫太郎、ワシントン=鳳山太成】国連の専門機関である世界知的所有権機関(WIPO)は4日、加盟国による投票で新しい事務局長を選出した。中国が候補者を擁立したが、日米欧が推すシンガポール出身者が当選した。知的財産権の侵害を理由に中国に貿易戦争を仕掛けたトランプ米政権にとって「知財の番人」に中国人トップが就くのを認めれば、国際的な知財保護の流れが逆行しかねないとの危機感が働いた。
4日、ジュネーブのWIPO本部で開かれた選挙。「今回の圧倒的な得票が知的財産を保護することの重要性を示している」。10月に就任する次期事務局長にシンガポール特許庁長官のダレン・タン氏を選出すると、米国のブレンバーグ在ジュネーブ国連大使は満足そうな表情を見せた。
選挙は83カ国による投票が2回行われた。決選投票ではタン氏と、中国人女性の王彬穎(ワン・ビンイン)WIPO事務次長との一騎打ちとなり、タン氏が55票を獲得して、28票の王氏を破った。事前の見通しでは接戦が予想されていたが蓋を開ければタン氏の圧勝で、2日間あった選挙日程も初日で終わるスピード決着となった。
外交の舞台で米政権は多数派工作に力を注いできた。ポンペオ米国務長官は「知財と国際法を尊重する候補を選ぶため多くの議論を重ねてきた」と話す。日本も2019年10月に、特許庁出身の夏目健一郎WIPO上級部長の擁立を決定したが、20年2月中旬に撤退した。ジュネーブ外交筋は「米国は途上国にも自分たちの地域の候補が負けたらタン氏に乗り換えるように働きかけていたようだ」と明かす。
実際、カザフスタンの候補者は3月4日の投票の直前に早々と辞退を表明。1回目の投票ではタン氏は全体の約4割となる37票を獲得し、王氏(19票)を大きくリードした。この時点で当選の可能性が低くなったコロンビアとガーナの候補者も棄権した。
選挙直前の2日にも米与野党の議員が連名でポンペオ氏に書簡を送り、中国人の当選を阻むため同盟国に働きかけるよう念押しした。同氏は選挙後、タン氏を「加盟国を団結させられるリーダーだ」と持ち上げた。
計15ある国連の専門機関のうち現在4つの機関を中国人が率いており、もはや珍しくはない。それでも今回、米国が一丸となって阻止に動いたのは知財という絶対に譲れない分野だったからだ。
米政権は18年夏から、米経済への副作用に目をつむってまで計3700億ドル(約40兆円)分への巨額の制裁関税を課して知財侵害をやめるよう中国に迫ってきた。20年2月14日に発効した米中貿易協議を巡る「第1段階の合意」の大きな柱が知財保護だ。そんな矢先に中国人がWIPOのトップに立てば「銀行の頭取に強盗をつかせるようなもの」(米紙ワシントン・ポスト)だった。
WIPOは知的財産が盗まれないように国際ルールの策定や、特許の運用・管理を担う。知財保護のルールが緩い中国が政策決定で主導権を握れば、日米欧が足並みをそろえて取り組んできたルール強化の流れが停滞するとの懸念が強かった。
前例はある。国際電気通信連合(ITU)では、15年に中国人の趙厚麟(ジャオ・ホウリン)事務局長が就任して以来、中国が主導する広域経済圏構想「一帯一路」への協力を推し進めたほか、中国の通信大手、華為技術(ファーウェイ)を援護する発言も多い。同じく中国人が指揮する国際民間航空機関(ICAO)では、中国政府の意向で台湾が総会に参加できなくなった。
今回は中国の敗退に終わったものの、国連を舞台にした米中のせめぎ合いは今後も激しくなりそうだ。国連予算の分担金の支払いで、中国は米国に次いで2番目に大きい。トップだけでなく、部長など主要ポストに中国人が就いている事例が増えている。
「米国第一」を掲げるトランプ大統領は国連を軸とした国際協調から距離を置いており、その間隙を縫って中国が存在感を高めている側面もある。あるジュネーブ外交筋は「国連の中国化が加速すれば、中立性が損なわれる」と不安をもらす。
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March 05, 2020 at 12:59AM
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「知財の番人」、中国候補者の選出阻止 日米欧が連携 - 日本経済新聞
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