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Saturday, May 23, 2020

社説 宇宙作戦隊 前のめりがはらむ危うさ - 信濃毎日新聞

 航空自衛隊の「宇宙作戦隊」が発足した。

 東京の府中基地を拠点に、隊員約20人で始動。当面は日本の人工衛星を保護するため、宇宙ごみや不審な衛星の監視に当たる。

 政府はその先に、他国の衛星通信を電磁波で妨害する技術の実用化、米軍によるミサイル防衛への協力強化を見ている。憲法や専守防衛との整合性を巡る議論は、なおざりのままだ。

 防衛省は将来、隊員を100人ほどに拡充する構えでいる。米軍や宇宙航空研究開発機構(JAXA)と監視情報を共有するシステムをつくり、2023年度から運用する。26年度までに独自の監視衛星も打ち上げる。

 米国は昨年12月、陸海空と並ぶ独立軍として1万6千人規模の宇宙軍を新設した。中国とロシアは他国の衛星を攻撃する「キラー衛星」、衛星からの電波を妨げる兵器を開発しており、トランプ大統領は宇宙を「新たな戦闘領域」に位置付けている。

 既に極超音速ミサイルを宇宙から破壊する研究に着手した。小規模衛星も増発し、中ロの兵器の探知能力を高めるという。

 日本の国会は1969年に「宇宙の平和利用」を決議したものの08年成立の宇宙基本法で非軍事原則は破られた。安倍晋三政権下の15年には、安全保障の確保を重点課題とする新宇宙計画ができ、18年の防衛大綱に宇宙専門部隊が明記されるに至っている。

 専守防衛の観点から、他国の衛星の機能を妨害する行動が許されるのか。米国の軍事戦略にどこまで付き従うのか。

 十分な検討がない中、河野太郎防衛相は「米国の衛星が攻撃された場合、日本の存立危機事態に当たりうる」と踏み込んだ。作戦隊発足の際も「宇宙をはじめとした新たな領域でも、わが国の優位性を確保することが重要」と前のめりな発言を繰り返している。

 安倍首相はロシアのプーチン大統領との会談を重ねてきた。中国とも「成熟した関係を築く」とうたっている。防衛面では米国に極端に依存し、中ロへの敵対姿勢をあらわにするのでは信頼関係は築けない。国内の民生用衛星までが標的になりかねない。

 1967年発効の宇宙条約は、天体の軍事利用と、大量破壊兵器を地球周辺の軌道に乗せることを禁じている。国連はいまも軍拡防止を訴え続ける。こうした取り組みの先頭に立ち、過熱する米中ロの競争に歯止めをかけることこそ日本の役割であるはずだ。

(5月24日)

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May 23, 2020 at 05:08PM
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