島根大学名誉教授 牧田 幸人
近時、国際関係における多様で変動的な事象の中で、特に多国間主義や国際協調主義に対し、一国中心主義あるいは自国第一主義が強調され、国際社会の統合的な秩序や基盤が大きく変容しつつあることに注視すべきである。大事なことは、この事象をどう捉え、評価するかだ。関連してここでは、国際関係における合意と協調という視点から、国際社会の特殊な権力構造や国際法の特性に留意し、論及してみたい。
さて、国際社会の法規範である国際法の基本的性格や特性は、どのような内実を有するか。それは、多様な歴史的背景のもとで、どのような要因により規律されてきたか。
国際法の妥当基盤である国際社会は、特殊な権力構造のもとで所与の時代状況に影響されつつ発展してきた社会だ。だが、国際法の歴史展開や国際社会の発展過程を顧みても、国際社会は今なお、世界国家でも世界政府でもなく、国際法上の能動的な行為主体である諸国を主要な構成単位とし、それら諸国の並存を基礎にした社会となっている。そこではこれまでも「力の支配」と「法の支配」の激しいせめぎ合いや対抗が展開されてきた。
第2次大戦後の国連は一般国際平和機構だが、超国家的な機構でなく、加盟国の積極的な国家意思の協調や集合を基礎に機能する特性を持つ。
また、国際法は合意秩序のもとで機能し、特性は分権的性格にある。この点に関連し、国際社会における権力の多元化のもとで究極的には、個別国家の権力を基盤にして法の定立・適用・執行が行われ「原子論的な分権化された法」としての性格を脱却しえないでいる、という指摘(田畑茂二郎・京大名誉教授)に傾聴すべきである。
国際法の定立の面では、二大法源の国際慣習法と条約の成立過程に注目することが有益だ。
国際慣習法は、法的信念に基づく法規範性の認識という黙示的合意を基礎に成立し、国際社会一般において妥当する。他方、条約は、国際社会における立法機関欠如のもとで国家意思の最大限の発現を表示する明示的合意を基礎に成立し、締約国間においてのみ効力を有する。
こうした国際社会や国際法の特性に鑑み、近時の動態と変容状況はどう捉え理解されるべきか。さらに、それらはどう評価され、将来に向けてどう展望されるべきか。
国際社会の多元的権力構造や国際法の分権的性格に留意すれば、ある意味では、今日の事象は不可避で必然でもあると言えなくもない。だが、それらが国家の「決定的で死活的な重大利益」あるいは「核心的利益」に係る重大事だとしても、それ以上に、国際社会全体の一般的・統合的利益を確保するための合意と協調が、最大限に優先されるべきである。
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まきた・ゆきと 1942年生まれ。国際法学者。京都大法学博士。京都大大学院を修了し、鹿児島大、島根大大学院で国際法を担当。倉吉市在住。
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July 12, 2020 at 07:57PM
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