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Saturday, June 26, 2021

社説:イラン大統領に強硬派 核合意の維持が最優先だ - 毎日新聞

 イランの次期大統領に反米強硬派のエブラヒム・ライシ司法府代表が選ばれた。8月に就任する。

 欧米諸国との融和を目指した現在の外交方針が、8年ぶりに転換される可能性が高い。特に注目されるのは核合意の行方だ。

 ライシ師はイスラム教シーア派の聖職者で、1981年に地方検事になって以降、主に司法畑を歩み2014年から2年間、検事総長を務めた。

 最高指導者、ハメネイ師の信頼が厚く、次期最高指導者の有力候補と考えられている。だが、80年代に政治犯の処刑に関与したとしてトランプ前米政権下の19年、米国の制裁対象に加えられた。

 選挙でライシ師は、貧困や汚職の撲滅を主張し、保守層の支持につなげた。

 開かれた選挙の点では疑問が残った。護憲評議会による事前審査で立候補が認められたのは、届け出のあった592人のうち7人だけだった。さらに選挙戦終盤に3候補者が撤退した。

 ハメネイ師は投票前、「国民が投票へ行かなければ、この国は不安定になる」と呼び掛けていた。にもかかわらず、投票率は前回17年の73・3%を大幅に下回り、過去最低の48・8%だった。

 イランは人口約8400万人の6割が35歳未満で、国民の多くは79年のイスラム革命時の熱気を知らない。インターネットや衛星放送の普及で、欧米文化に憧れる若者も多い。低投票率はイスラム体制への不満の表れとも言える。

 イランの核開発を制限する国際合意について、ライシ師は順守する姿勢を示す一方、条件として米国に経済制裁の全面解除を要求している。

 新政権が国民の支持をつなぎ留めるには、経済不振からの脱却が課題だ。米国に核合意復帰を促すためにも、新大統領は合意を維持する必要がある。

 イランの核開発については、イスラエルやサウジアラビアなど湾岸諸国も神経をとがらせている。地域安定の観点からもイランは国際協調に背を向けてはならない。

 米国との歴史的あつれきやイデオロギー対立を乗り越え、関係改善を模索してほしい。イランともパイプを持つ日本は、新政権に対話継続を働きかけるべきだ。

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