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Wednesday, June 9, 2021

【主張】国際法人税改革 適正負担求める合意図れ - 産経ニュース

先進7カ国(G7)財務相会合で、各国が法人税の最低税率を「少なくとも15%」とすることで合意した。経済協力開発機構(OECD)での正式決定を目指す。

世界では過去30年以上にわたり、企業を誘致するため法人税の引き下げ競争が繰り広げられてきた。合意はその流れからの転換を意味する。国境を越えて活動する多国籍企業などに適正な法人税負担を求める国際的枠組みとして機能させる必要がある。

日米欧の主要国の法人税率は20%を超えており、最低税率導入で影響を受けるのは、主に租税回避地(タックスヘイブン)や低税率国である。合意を通じて多国籍企業の税逃れを封じ、新型コロナウイルス禍で増幅している経済・社会の格差是正につなげたい。

合意した最低税率水準は米国がG7会合前に表明したものだ。当初は21%以上の税率を検討していたが、低税率国の反発を考慮して妥協した。実際に適用する税率は各国で決めるが、最低水準の線引きを明確化した意義は大きい。

さらに米グーグルなど「GAFA」と呼ばれる巨大IT企業を念頭に置くデジタル課税の国際ルールでも一致した。「利益率の10%を超える部分に対し、少なくとも20%の課税権を消費された国・地域に与える」と定めた。巨大IT企業が物理的な拠点を持たない国などでも、こうした企業に課税できるようにしたことは前進だ。

多国籍企業や巨大IT企業の過度な税逃れを防ぐには、多国間で法人税の最低税率やデジタル課税の枠組みを構築することが有効である。とくに巨大IT企業は、タックスヘイブンや低税率国に拠点を移し、実質的な課税逃れや税負担を軽減する事例が目立ち、世界的な批判が高まっている。

巨大IT企業はコロナ禍でも世界中で高い収益を確保し、それを株主配当や自社株買いに充てている。中小・零細事業者や低所得層が困窮する一方、巨大IT企業は富むという構図が格差拡大を助長しているとも指摘される。高収益企業が適正に税を負担するのは社会的な責務でもある。

欧州の一部やインドなどは独自のデジタル課税に動いており、これに反発する米国が対抗措置を示唆している。国際的な枠組みで巨大IT企業に課税することは、紛争の回避にもつながろう。具体的な合意づくりを急ぎたい。

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