【カイロ=佐藤貴生】イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)の国交正常化合意から13日で1年となった。同国に続いてバーレーンとスーダン、モロッコのアラブ3カ国もイスラエルとの国交正常化で合意し、歴史的な出来事の先駆けとなった。イスラム教スンニ派のアラブ諸国の最重要課題がパレスチナ問題からシーア派の地域大国イランの軍事的脅威の封じ込めに移ったことを印象付けた。
イスラエルとUAEは相互に大使館を設置。両国は投資促進のため租税協定も締結、イスラエルは10月にUAEで始まるドバイ万博にも出展する予定で、関係が急速に進展している。技術立国イスラエルと投資・金融の中心地であるUAEの協力強化は中東の経済情勢を大きく変えつつある。
5月にはイスラエルと、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスが大規模軍事衝突に陥り、UAEは「深い懸念」を表明。しかし、二国間関係には大きな打撃とならず、パレスチナ問題の地盤沈下が続いている。
イスラエルとアラブの国交正常化は1979年のエジプトと94年のヨルダン以来で、イスラエルに肩入れする政策を取ったトランプ前米政権が推進した。
スンニ派大国サウジアラビアの動向は今後の注目点となりそうだ。聖地メッカを抱え、イスラム世界の盟主の地位にあるサウジはパレスチナ問題の切り捨てにつながるためイスラエルとの国交正常化に踏み切っていないが、双方の間では水面下で接触が続いているもようだ。
イスラエルは中東随一の親米国家で、米有力シンクタンクのブルッキングス研究所は7月下旬、サウジやUAEのイスラエル寄りの姿勢には「米国とのパートナーシップの維持」という間接的だが重要な意義があると指摘。背景にはイランの脅威への対抗策として、安全保障面で米国に依存してきた事情がある。
一方、イランでは8月上旬、国際協調路線の穏健派、ロウハニ前大統領が任期切れを迎え、反米保守強硬派のライシ新大統領が就任した。核・ミサイル開発で妥協せず欧米との関係が冷え込むとの見方が多い。
米国は今年末までにイラクで駐留米軍の戦闘任務を終了させる方針だ。中東で米軍の存在感が薄まるなか、イスラエルとの国交正常化にかじを切ったアラブ諸国がイランの脅威とどう向き合うかが焦点となる。
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