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Saturday, September 25, 2021

一時保護児面談じっくり、明石市第三者委設置5か月…「親と児相対話のきっかけに」 - 読売新聞

 児童相談所が虐待を受けた子どもを親元から引き離す一時保護について、兵庫県明石市が妥当性を審査する全国初の第三者委員会を設置してから5か月たった。これまで20人以上の子どもと面談し、児相に助言してきたという。委員の一人で、元福岡市児相所長の藤林武史さん(62)は「子どもの権利が守られ、適切な一時保護が実施されるよう、よりよい制度にしていきたい」と語る。(増田尚浩)

 市が4月20日に設置した第三者委員会は、元裁判官、弁護士ら6人で構成。一時保護から原則2日以内に委員が子どもと面談し、必要に応じて児相や親への聞き取りを実施し、妥当性を審査した上、2週間以内に児相に意見を伝える。

 市によると、一時保護された子どものうち、短期間で解除されたケースを除き、4~8月に22人と面談。自分の意見をうまく説明できない子どももおり、藤林さんはじっくり聞くため、1時間かけたこともあった。

 今のところ、一時保護の妥当性が問題になったケースはない。しかし、藤林さんは「不安に過ごす中、耳を傾けてくれる大人がいることは安心につながる」と考えている。藤林さんが一時保護所を訪ねた際、子どもから声をかけられることもあったという。

 委員は子どもの要望を聞き取って児相に伝えている。一時保護所では、トラブル防止のため通学が許されないケースが多いが、市では、希望する子ども全員が通学している。

 一方、課題も見えてきた。

 制度では、面談は保護当初に限られるが、2か月を超えて保護が続き、再面談を実施したケースが1件あった。藤林さんは「子どもの気持ちは時々で変わる。面談の頻度が適正か検討する余地がある」とする。

 制度では親側に不服があれば、第三者委に申し立てをすることができ、これまでに1件あった。審査中に児相が保護を解除したため、意見は出さなかったという。

 藤林さんは「第三者が関与することで、親と児相が子どもの将来に向けて対話を始めるきっかけになる」とし、「子どもを守り、親も支えるのが児相の役割。国や他の自治体の参考になる制度を模索していきたい」と話した。

 第三者委員会は、明石市内の男児が1年以上保護され、裁判所が虐待を否定した問題を受けて導入された。

 男児は両親と兄との4人家族。生後2か月だった2018年8月、右腕を骨折し、虐待が疑われて兵庫県の児相に保護された。母親は「ベビーベッドの柵にぶつけた」と説明したが、裁判で虐待が否定されて保護が解除されるまで1年3か月かかった。

 昨年9月、市長が両親に謝罪し、再発防止策として第三者委員会が設置された。

 男児は今は家族4人で暮らしているが、「パパ」「ママ」と呼び始めたのは帰宅から数か月後だった。3歳になった今も言葉の遅れがあり、父親にも十分なついていないという。両親は「兄も含めて、奪われた日常を取り戻すため必死に暮らしてきた」と訴える。

 一時保護を見送られた結果、子どもが命を失うケースは各地で絶えない。両親は児相の役割を理解した上で「私たちに起きたことは誰にでも起きる。誤った保護で苦しむ家族が二度と生まれないでほしい」と願う。

 国も一時保護の妥当性を家庭裁判所が審査する制度を検討している。「児相の判断を裁判所が適切にチェックできるかが重要。子どもにとって何が大事かを一番に考えて、制度設計や運用をしてほしい」と話した。

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