◆女性を人格的存在とみなさない「パシュトゥーンの掟」 シャリーアだけでも十分女性差別的だが、タリバンは更に際立つ。タリバンを構成する部族、パシュトゥーン族の慣習法「パシュトゥーンの掟(パシュトゥーンワーリ―)」のためだ。パシュトゥーンの掟とは、古代から受け継がれてきたパシュトゥーン族の不文律で、一種の社会規範の役割をする。友人をもてなして義理を守り、敵には必ず復讐しなければならないなどの内容が含まれる。これを守らず不足の名誉が失墜されることは、命をかけてでも防がなければならない。パク・ヒョンド教授は「タリバンが米国の爆撃を甘受しつつもオサマ・ビン・ラディンをかくまったのも、友人との義理を守らなければならないというパシュトゥーンの掟」と述べた。 パシュトゥーンの掟のもう1つの重要な教えが「どんな手を使ってでも、女性を保護する」だ。パシュトゥーン族は、女性を独立した存在と見ず、必ず男性の保護を受けなければならない存在とみなす。女性は、男性の許可なしに外出することができず、結婚もできない。 結婚も独立した2人の人間の人格的結合ではなく、男性が被保護女性を選択する行為に近い。アフガンの古い格言の中に「女性の最初の生理は、父の家ではなく、夫の家で迎えなければならない」という言葉があるほどだ。家族内の女性がこれらの規律を破った場合、パシュトゥーン族は家族の名誉が失墜したと考え、女性の命を奪うことも躊躇しない。米サウスカロライナ大学のハミド・カーン教授は、「パシュトゥーン族は、女性を保護するという名目で弟や兄が死んだらその妻を受け継いだり、いとこ同士で結婚する場合も珍しくない」と説明した。 アフガンは、韓国とは異なり、部族制国家で中央集権的統治の経験が少ない。国の司法制度と行政システムよりも部族レベルの決定が個人に与える影響の方がはるかに大きい。このため、シャリーアやパシュトゥーンの掟によって、部族が下した刑事的処罰が執行されることが多い。女性が部族の名誉を失墜したと判断されれば、部族の住民が任意で女性を殺害する「名誉殺人」が頻繁に行われている。パク・ヒョンド教授は「タリバンはイスラム教徒の皮を被っているが、パシュトゥーンの掟の慣行に基づいて動いている」とし「そのため、他国のイスラム教徒よりも女性に厳しい」と述べた。 アフガンの女性の人権水準は世界最下位だ。世界経済フォーラムによると、性格差指数は2021年156カ国のうち156位、UNDPの性の不平等指数は189カ国中169位だ。アフガンで活動する現地の女性運動機構によれば、部族の伝統の中に閉じ込められて生きるアフガン女性の方がむしろ女性の人権運動を拒否することも頻繁にあるという。 ◆依然暗いアフガンの未来 タリバンが掌握している限り、アフガン女性の人権向上は、はるか遠いと専門家はみている。アラブ女性協会事務総長のリナ・アビラフェ博士は「アフガン女性は状況が良くなるという希望を持っていない」とし「彼女たちは悪循環に陥ったように感じながら生きている」と述べた。アフガンで活動中の女性人権団体イコーリティ・ナウ(Equality Now)のヤスミン・ハッサン事務総長は「過去20年間、アフガン女性の人権を高めるために、多くの団体が膨大な作業をしてきた結果、女性が警察になり、裁判官や長官になり、国会議員を排出した」とし「しかし、タリバンの執権後、このような努力が水の泡になる危機に置かれた」とした。 それでもアフガン人はカブール北部の都市パンジシールから始まった抵抗軍「民族レジスタンス戦線」の反撃に期待をかけている。ムジャーヒディーンの指導者であり、パンジシールの獅子と呼ばれたアフガン戦争の英雄アフマド・シャー・マスードの息子が抵抗軍を率いてタリバンに対抗している。パク・ヒョンド教授は「外部の助けなしに抵抗軍の力だけでタリバンを退けるのは容易ではない」とし「現在、アフガンを囲む複数の国がアフガンの状況に注視しており、外部の介入によって変数が生じる可能性がある」と述べた。
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