本シリーズ「内部告発、その後追う」では、これまで告発者の声や法律の問題点などを見てきた。
2006年に施行された公益通報者保護法は、16年の時を経て2022年に改正することになった。過去の告発者が指摘するような問題点は残されているが、改正を踏まえ、企業がやらなくてはならないことは何なのか。改正のポイントと、企業が取るべき対策について考えたい。
改正法では、従業員300人超の全事業者に適切な内部通報体制の整備を義務付ける。従業員300人以下の企業は努力義務だ。担当者や役員が通報者を探すなどの行為が禁止され、違反した場合、行政側から勧告などの処分を受ける可能性がある。外部への通報についても、通報者探しは禁止される。
企業の多くは既に相談窓口などを設置している。改正法は、通報先の内部、外部を問わず、公益通報者を保護するよう求めており、企業にとっては、外部に告発されるリスクは相対的に高まる。窓口設置など、形だけ社内の体制だけを整えても十分とは言えない。
適切な運用なければ画餅
品質不正問題が発覚した三菱電機は、「倫理遵法ホットライン」と呼ばれる内部通報窓口を設置している。監査部が担当する社内窓口と、外部法律事務所の社外窓口がある。社内窓口には3人が従事するという。ホットラインへの通報は20年度65件あり、増加傾向にあった。
問題を受けて同社が10月に公表した調査報告書は、「社員が内部通報制度の存在を知らなかった」「制度が正しく理解できていなかった」などという声があり、「必ずしも制度が周知徹底されていないことが窺われる」と指摘した。形だけ整えても、企業が適切な運用をしなければ、制度は絵に描いた餅になる。
不祥事などをきっかけに通報制度を改善してきた企業も多い。不正会計問題が表面化した東芝は、外部弁護士と社外取締役で構成される監査委員会と外部弁護士にそれぞれ直接通報できるようにした。通報を受ける社員は、守秘義務が社内規定で課せられている。
かんぽ生命保険の大規模な不正販売など不祥事が相次いでいる日本郵政も21年9月、中立公正な立場で内部通報を調査する外部弁護士ら約40人で構成し、受け付けから調査、報告までを一貫して行う「社外専門チーム」を設置している。法改正も踏まえ、社内の人間が介在しないことによる通報しやすさを意識した。
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