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Friday, November 26, 2021

虐待保護に司法審査 - Miyanichi e-press - 宮崎日日新聞

◆児相の人材育成し質向上を◆

 児童相談所が虐待を受けている疑いのある子どもを親から引き離す一時保護について、厚生労働省は司法審査を導入する制度案をまとめた。親の同意を得られない場合に、保護開始の段階で児相が審査を請求。裁判官が妥当と判断すれば「一時保護状」を発行する。逆に妥当でないときは請求を却下し、保護は解除される。

 厚労省は虐待対策などを議論する社会保障審議会専門委員会に制度案を提示。年内の議論を踏まえ、来年の通常国会で児童福祉法改正案の提出を目指す。

 全国の児相が児童虐待として対応する事案は増加の一途をたどり、2020年度に20万件を超えた。一時保護も増え続け、強制的な措置の引き離しに反発する保護者と児相との対立が目立つようになった。中立の裁判所が審査することで保護者が受け入れやすくする狙いがある。

 児童虐待防止法などの度重なる改正で、児相の権限と機能の強化が図られてきた。00年施行の防止法で、児相は虐待の恐れがあれば立ち入り調査できるようになり、07年の改正では保護者が調査を拒んだときに裁判所の許可を得て強制的な立ち入り調査が可能になった。

 しかし介入する権限は強まっても、それで全てが解決するわけではない。一時保護した子どもを再び家庭に帰すには親と話し合うなど支援も行わなければならず、介入で崩れた信頼関係を修復するのは容易ではない。このため、虐待リスクがあると判断すれば、ちゅうちょなく一時保護する虐待対応の基本の実践が難しいとされる。

 19年度に5万2916件を数えた一時保護を巡っては、保護者の同意なく2カ月を超す場合は裁判所の承認が必要になるが、それ以外は児相のみの判断で可否を決める。保護者の同意がないのは全体の2割程度。司法審査の導入により介入を巡る保護者との対立が減り、その後の支援にスムーズにつながっていくことが期待されている。

 ただ、審査請求で裁判所に提出する資料をそろえたり、子どもの意向に目配りしたりするため、児相の負担が増す恐れもある。厚労省は、児童の面談や保護者の指導に当たる専門職の児童福祉司が、18年度策定の増員計画を前倒しした結果、21年度中に約5170人に達する見込みと公表。17年度比で約2千人増となる。心のケアを担当する児童心理司なども増員される。

 だが現場からは経験の浅い職員が一気に増えることに戸惑いの声も上がる。的確なリスク判断と迅速な保護のためには、ベテランと若手の配置を工夫したり、実地研修で人材育成を充実させたりして、絶えず質の向上を図ることが必要になる。

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