「この電車に乗りたい猫好きの方はいますか?」という文言で紹介された動画が、ツイッターで注目を集めている。山間部を走り抜けたジオラマ鉄道の行き先を、巨大な猫が遮ってくるのだ。
この動画は、保護猫と触れ合いながら定食とジオラマを楽しめる施設・ジオラマ食堂(大阪市)で撮影された。なぜこのようなユニークな組み合わせの店を運営するようになったのか。J-CASTニュースは2022年2月15日、店主の寺岡直希さんに取材した。
店を開いたきっかけは「妹の遺言」
ジオラマ食堂は、もともと猫のいない飲食店だった。2005年にラーメン屋「てつどうラーメン」として開業し、その後は鉄道カフェになるなど各所で業態や名前を変えながら、ジオラマ展示を行う飲食店として運営してきた。取材に対し店主の寺岡さんは、店を開いたきっかけは「妹の遺言でした」として、こう説明する。
大病を患った寺岡さんの妹は、子供が喜ぶような仕事をしてみないかと提案したという。この言葉を受け、寺岡さんは子供が喜ぶようなジオラマを併設した飲食店や、学童保育の運営を始めた。
しかし経営がようやく落ち着いてきた2020年、コロナ禍に見舞われた。コロナ禍の直前には1日70人超の子供たちが訪れていたが、外出自粛などの影響で10人くらいまでに減ったという。経営が苦しくなり、困っていた時期に出会ったのが「猫」だった。
20年6月上旬、寺岡さんが運営する学童保育の保育士が瀕死の子猫を連れてきた。寺岡さんは猫が苦手だったが、娘が育てると意気込んだため保護することになった。懸命な救助活動を受け、元気になった子猫は「シンバ」と名付けられた。シンバはジオラマ食堂の一角で大きな声を上げて鳴くようになった。
猫のために生きる決意をした
それから数日、シンバの声を聞きつけた母猫や兄弟猫が食堂の前に訪れるようになった。母猫は、兄弟猫が店に入ろうとするとすぐに連れ戻すなど警戒心が強かった。寺岡さんに襲い掛かってくることもあったという。気性の荒い母猫と兄弟猫たちの保護は容易ではなかった。
それでも20年7月24日、なんとか母猫と兄弟猫の保護に成功。検査などを終え、シンバの家族たちと暮らすようになった。寺岡さんは店に寝泊まりし、少しずつ猫と距離を縮めていった。寺岡さんは当時をこう振り返る。
「もともと猫は嫌いでした。サラ(シンバの母猫)には10回くらい血まみれにされ、手放すか悩んだこともありました。どうやったら仲良くなれるのか全く分かりませんでした。
しかし店に簡易ベッドを作って寝泊まりするようになって3か月くらい経った頃、サラがいつも視界にいるようなりました。抱きかかえても怒らなくなりました。そのとき、あぁ猫は話が分かるんだと感じました」
展示しているジオラマは、寺岡さんと16年ほど勤めているベテランのスタッフが制作している。しかしほとんど毎日、猫たちに壊されてしまう。そんな状況でもジオラマ食堂は「いまでは猫たちに壊されては再生させることも日課となり、常に状況が変化するジオラマになりました」と前向きだ。
「高校生のころから務めているスタッフは、ジオラマ修理がとても上手くなり、今ではほとんどそのスタッフが手掛けています。ジオラマは猫がケガをしないよう、素材を変えるなど工夫をしています」
シンバたちの様子をインターネット上で発信すると、SNSで話題となった。さらには多数のマスコミが取材に訪れ、現在は客足も少しずつ回復している。21年8月の来店者数は200人ほどだったが、大手メディアに取り上げられた結果800人を超えることもあるという。
猫のおかげで店がにぎわったことを受け、寺岡さんの中には「たくさんの猫を救いたい」という使命感が生まれたという。取材に対し、「神様がいるならば、『猫たちのために生きなさい』と言われているように感じました」と話した。
(J-CASTニュース編集部 瀧川響子)
からの記事と詳細 ( 「猫嫌い」の店主が「たくさんの猫を救いたい」と思うまで ジオラマ食堂、保護猫が取り戻した活気 - J-CASTニュース )
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