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Sunday, May 15, 2022

ウクライナ避難民受け入れをきっかけに「人道の国」へ | | 谷合正明 - 毎日新聞

 岸田文雄首相は、3月2日にウクライナ避難民を受け入れる方針を表明した。早期に方向性を示したことで、自治体や企業が積極的に受け入れる動きにつながった。国民の間でも賛同する声がほとんどだ。

 国際社会と連携した人道支援の強化が、人間の尊厳に立脚した法の支配の確立と国際環境の改善のために重要だという意義を、政府は積極的に訴えていくべきだ。

 日本に来たウクライナ避難民は5月4日現在、826人で、日本が過去に受け入れた難民などと比較すると少なくない数字だ。これだけ好意的な形で外国人の難民・避難民受け入れが進んでいるのは初めてと言っていいだろう。

課題は入管庁と自治体の連携

 避難民受け入れの実務は出入国在留管理庁が中心だが、これまでのところ自治体や民間との連携に課題がある。

 例えば自然災害が起きた時の被災者支援は内閣府や厚生労働省などが自治体、ボランティアと連携して対応するが、入管庁はそうした連携に慣れていない。試行錯誤しながら受け入れの枠組みを作っているところだ。

 今後、日本に身元保証人のいない避難民が増加する可能性もある。長期化に備え、避難民に寄り添った総合調整機能を強化すべきだ。

戦争による避難民を保護できるように

 首相は紛争地からの避難者を保護する「準難民」制度創設を検討していると明らかにした。この首相の姿勢は評価する。昨年の通常国会で廃案になった入管法改正案に盛り込まれていた「補完的保護対象者」を指す言葉だと理解しているが、法改正で実現すべきだ。

 これまで、難民条約で定義された「条約難民」に該当しない人については、時の法相が人道配慮という形で運用上、受け入れていた。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)からも、戦争を理由として避難している人について、法相の裁量ではなく、保護する制度を持つべきだと指摘されている。その通りだと思う。

 法改正の際には、他の改正事項もあるので、党としてもう一度検討し、与野党でもよく協議する必要がある。

避難民支援の制度的担保を

 避難民の多くは家族をウクライナに残しており、状況が許せば戻りたいというニーズがある。法的に「補完的保護制度」ができても、定住を前提としないウクライナ避難民が申請するかどうかは別の話だ。

 一時的に日本に保護してもらいたいという人もいるので、制度を作って終わり、では済まされない。避難民に支給している生活費が引き続き対象になるのかなど、はっきりしない部分もある。

 現在、ウクライナ避難民支援は法律上の担保はなく、首相の発言で動いている。…

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