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ITを取材していると、プライバシー・個人情報保護の問題を避けては通れない。ただ、個人情報保護法(個情法)は個人の権利利益を保護することを目的とし個人情報の適正な取り扱いの確保を定めるが、プライバシー保護との関係は明示されていない。「個人情報は守るがプライバシーは守れない」ともやゆされるゆえんだ。
カメラ画像による顔識別といったデジタル技術の発展や、ネットを介したデータの流通や活用が増え、プライバシーや個人情報が絡む領域は拡大している。こうした中、同法がプライバシー保護に踏み込む兆しが出てきた。
個情法施行で「プライバシー」から「個人情報」に世間の関心が移る
「(それまでは世の中で)『プライバシー』という言葉が使われてきたのが、(2005年に)個人情報保護法が施行されると『個人情報』に関心が移り、『プライバシー』という言葉はあまり使われなくなった感じがあります」――。
2023年1月28日、都内で開かれた、個人情報保護委員会(個情委)初代委員長を務めた堀部政男一橋大学名誉教授の叙勲記念シンポジウム・パーティー。これまでのプライバシー・個人情報保護の歴史を振り返り、堀部名誉教授がこう述べたのが印象的だった。堀部名誉教授は日本でプライバシー侵害が議論になり、プライバシー権が認識されるようになった1960年代からプライバシーの研究、個人情報や情報公開の法制度の策定に携わってきた。
なお、この日程は「関係者の合う日程がこの日だった」(堀部名誉教授)ためで偶然とするが、1月28日はプライバシーやデータ保護について考える「データプライバシーデー」である。1981年1月28日に欧州評議会(CoE)の第108号条約「個人データの自動処理に係る個人の保護に関する条約」が調印されたことにちなむ。
「プライバシー侵害が個情法違反にもなりうることを示した」
個情法はプライバシー保護に言及していないものの、一方で、個情委が個情法の適用性の判断にプライバシー保護の考え方を取り入れる動きが出てきた。
個情委は2023年1月11日に「犯罪予防や安全確保のためのカメラ画像利用に関する有識者検討会」の報告書案を公表した。「肖像権・プライバシー侵害が個情法違反にもなりうることを示した」と同検討会で座長を務める東京大学大学院法学政治学研究科の宍戸常寿教授は説明する。
そのうえでこう続ける。「個情委が肖像権・プライバシーの侵害も見ていくという意思を示した意義は大きい」(宍戸教授)。
今回公表した報告書案では、事業者が防犯などのために設置する顔識別機能付きカメラシステムの適切な利用について、個情法の順守とプライバシー保護の関係に踏み込んだ。具体的には第19条「不適正利用の禁止」、第20条「適正取得義務」について、その違法性の判断材料として、過去のプライバシー侵害の裁判例で示された判断基準を活用できるようにした。
一般にプライバシー侵害に対して訴えると、民事裁判の判断が下される。プライバシー侵害には、週刊誌報道などで問題になる「公表されたくないことを公表されない権利」の侵害のほか、「情報の取得それ自体」がプライバシー侵害となる裁判例もある。報告書案では後者のプライバシー侵害の裁判例の考え方を参考にして、同案で議論の対象となった防犯カメラ顔識別が第19条、第20条に違反していないかどうかを判断することを示した。
からの記事と詳細 ( 個人情報保護法はプライバシーを守るか?防犯カメラ顔識別報告書 ... - ITpro )
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