広島大は、「オオサンショウウオ保全対策プロジェクト研究センター」を同大学総合博物館(東広島市)に新設した。国の特別天然記念物に指定されるオオサンショウウオを巡っては、生息地の環境変化や中国種と交雑した個体の拡大が懸念されており、研究者らが在来種の保護に向け、調査や技術開発などを進める。(豆塚円香)
オオサンショウウオは世界最大級の両生類で、2022年に「準絶滅危惧種」から1段階上の「絶滅危惧種」に変更された。中国山地を中心に分布し、県内では広島大や安佐動物公園(広島市安佐北区)などで調査研究が盛んに実施されている。
「オオサンショウウオを取り巻く環境は、待ったなしの状況だ」。調査に長年携わり、同センター長に就任した清水則雄准教授(動物生態学)は危機感を示す。
山間地の清流にすむオオサンショウウオは、毎年のように起こる豪雨の度に下流に流される。河川改修により
昨年4月には、原爆ドーム(広島市中区)近くの元安川で、豪雨により流されたとみられる個体が見つかったが、海水の影響で死んでしまった。
その約1か月後には、中国産のオオサンショウウオと在来種が交わった「交雑種」が県内で初確認された。広島大が広島市の八幡川で調査したところ、40頭中33頭が交雑種や中国種だった。
中国種は在来種より大きく、雄同士の争いにも強い傾向があるため、繁殖しやすいとされる。京都市の鴨川水系では最初に交雑種が確認されてから30~40年で、生息する個体の98%が外来種や交雑種に置きかわった。清水准教授は「放置すれば固有種は消滅してしまう」と訴える。
広島大は危機的状況を受け、野外調査やDNA鑑定の技術などを持つ学内外の研究者らを集め、5月1日に同センターを発足。総合的な保全対策を目的に、八幡川での交雑種の調査を範囲を拡大して継続するほか、交雑種と在来種を判別するDNA鑑定の新たな技術を導入することも目指す。
新技術は鑑定費用をこれまでの10分の1以下に抑えられ、時間も数日から1、2時間に短縮できるという。今後は、他の地域からの判定依頼も引き受け、国内での交雑種分布の状況把握や迅速な対応を目指す。
また、オオサンショウウオの保護活動に市民の力を借りようと、公開講座や小中学校での出前授業、観察会も実施し、理解を広めていく。清水准教授は「オオサンショウウオは川の生態系のトップ。保護することで、他の生き物を守ることにもつながる。負の連鎖に立ち向かいたい」と力を込める。
からの記事と詳細 ( <オオサンショウウオ>在来種保護へ 研究施設 - 読売新聞オンライン )
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