【2023年6月5日 ニューヨーク/オスロ(ノルウェー)発】
2005年から2022年の間に国連が確認した紛争下における子どもへの重大な権利の侵害は31万5,000件に上っており、この数は戦争や紛争が子どもにもたらす甚大な影響を端的に示しています。
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各国政府、ドナーおよび人道支援団体が、ノルウェーのオスロで開催される「武力紛争下の子どもの保護に関する国際会議」に参加するにあたり、ユニセフ(国連児童基金)は2005年にモニタリングを開始して以来、アフリカ、アジア、中東、ラテンアメリカで起きた30以上の紛争において、紛争当事者による31万5,000件の重大な権利侵害を国連が確認したと報告しました。
以下は確認された紛争下の権利侵害の一例です。
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12万人以上の子どもが命を落とすか、重傷を負った。
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少なくとも10万5,000人の子どもが、武装勢力や武装集団に徴兵・徴用された。
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3万2,500人以上の子どもが誘拐された。
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1万6,000人以上の子どもが性的暴力を受けた。
また国連は、学校や病院への攻撃は1万6,000件以上、子どもへの人道支援の妨害は2万2,000件以上確認しています。これらは確認されたケースにすぎないため、実際の数はこれよりはるかに大きいと思われます。さらに、何千万人もの子どもが家やコミュニティから離れることを強いられ、友人や家族を失い、親や養育者から引き離されているのです。
ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセルは、「あらゆる戦争は、究極的には子どもたちに対する戦争なのです。紛争にさらされるということは、子どもたちが破滅的な、人生を一変させるような影響を受けるということです。子どもたちを戦争から守るために何をすべきか分かっているにも関わらず、国際社会の対応は十分とは言えません。 国連は毎年、子どもたちの生活を引き裂くような、直接的で痛ましい、そして結果の予想があまりにもしやすい行為についての記録を続けています。おとなが起こした戦争によって子どもたちが犠牲とならないようにし、世界で最も脆弱な立場にある子どもたちの保護を強化するために必要な大胆で具体的な行動を取ることが、私たち全員に求められているのです」と述べています。
このような状況を受け、ユニセフは、メンタルヘルスケアと心理社会的サポート、子どもの保護に関するケースマネジメント、家族の捜索と再会、ジェンダーに基づく暴力を受けた子どもへの支援などを通じて、紛争下で影響を受けた多数の子どもたちのケアと保護を行い、彼らのウェルビーイングを高めています。2022年、ユニセフは、武装勢力や武装集団から抜け出した1万2,500人近くの子どもに社会復帰支援などの保護活動を、900万人以上の子どもに爆発性戦争残存物(ERW)から身を守るのに有用な情報を提供しました。
残念ながら、紛争の影響を被っている子どもたちの保護に関するリスクの規模は大きく、対応のために集まった資金の規模では足りません。ユニセフや人道行動における子どもの保護のためのアライアンス(The Alliance for Child Protection in Humanitarian Action)などが委託した「人道支援資金予測(Humanitarian Funding Forecast)」による新たな分析では、武力紛争下の子どもの保護ニーズに対応するために、2024年までに子どもの保護部門に10億5,000万米ドル、2026年までに13億7,000万米ドルが必要になるとされています。これには、家族の再会、メンタルヘルス支援、武装集団への徴兵防止などの重要な活動が含まれます。
しかし、この調査では差し迫った資金不足も指摘されています。現在の人道支援資金が集まるペースのままだと、不足額は2024年には8億3,500万ドル、2026年には10億ドルにまで達すると予測されています。これにより、紛争下の子どもたちは、戦争、児童労働、人身取引、暴力などの直接的かつ永続的な影響にさらされることになるおそれがあります。
オスロで開催される国際会議に際し、ユニセフは各国政府に対し、以下のような大胆で新たな取り組みを行うよう呼びかけています。
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戦争下の子どもを保護するためにすでに確立している国際法や国際基準を順守し、実施する。たとえば、学校や病院および水・衛生施設などの保護対象物を攻撃から守ること、武装集団・勢力による子どもの徴兵や徴用を阻止すること、人口密集地における爆発性兵器の使用を抑止することなどが含まれる。
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子どもの権利が侵害された場合、加害者の責任を問うこと。
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紛争下の子どもの保護に必要な資金の調達を、ニーズの高まりに応じて必要な規模と速度でリソースを導入して強化する。これには、人道支援活動への投資と、国内の子どもの保護活動従事者への投資が含まれなければならない。
またユニセフは、武力紛争下での人道支援活動の中心に子どもとその保護を据える施策に投資することを、各人道支援団体に呼びかけています。
ラッセル事務局長は、「私たちは、直面する課題の規模に見合った子どもの保護を提供しなければなりません。支援を必要とするすべての子どもに、特に最も脆弱な立場にある子どもたちに手を差し伸べるために、私たちはできる限りのことをしなければなりません。子どもを保護する活動は、既存の制度やコミュニティ構造を基盤として、子どもの権利、参画、そして最善の利益を支えるものでなければなりません。 このような状況下での支援やアドボカシー活動は、確実に子どもとその保護を人道支援行動の中心に据えたものでなければなりません」とも述べています。
ユニセフはノルウェー政府などと共に「武力紛争下の子どもの保護に関する国際会議」の共催者であり、国連人道問題調整事務所(OCHA)、アフリカ連合、子どもと武力紛争国連事務総長特別代表事務所(SRSG/CAAC)、人道行動における子どもの保護のためのアライアンスと連携しています。
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■ 注記
ユニセフは、紛争下の子どもたちを保護する取り組みを強化するために、以下を表明しています。
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ユニセフは、子どもの保護を中心にすることを定めた組織としての方針の策定と実施を通じて、子どもとその保護を人道支援活動の中心に据えることを表明している。この取り組みは、子どもの保護を部門横断的に、国際的な施策、戦略、優先事項、作業計画に統合するものであり、子どもへの攻撃がますます増えている現状において、最優先事項として子どもの保護とその権利を擁護するというユニセフの使命を意図的に強化することを意味している。
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ユニセフは、子どもに対する重大な権利侵害のモニタリングを行い、記録・確認し、紛争当事者に働きかけるのに必要な最低限の人員を維持するための年間コストの50%相当を内部資金から割り当てる。その一方で必要に応じて人員の数を増やし、パートナーから同等の資金を確保するよう努力する。
政府や非政府機関(NGO)のパートナーと共に、ユニセフは部門を超えて、武装勢力・集団から抜け出した子どもたちを紛争中、紛争後に支援する方法を変革することを意図した、子どもの社会復帰に関する新たなグローバル・イニシアティブを実践する。
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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。(www.unicef.org )
※ ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます
■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進国33の国と地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。(www.unicef.or.jp )
からの記事と詳細 ( 1日20人の子ども、武力紛争で死傷~過去18年で計12万人、紛争下 ... - PR TIMES )
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