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Monday, June 5, 2023

自然の均衡状態を復元しつつあるサウジアラビアの環境への取り組み - ARAB NEWS

  • 2030年までに保護生息地を30%増やすというサウジアラビアの取り組みが世界環境デーにおいて脚光を浴びている
  • SGIを初めとする取り組みが、植生の増加や絶滅危惧種の回復、脆弱な状態にある生息地の保護のための指針を提供している

ラワン・ラドワン

ジェッダ:数世紀にわたる人間による乱用が地球の生物多様性の自然なサイクルに影響を与えている。この惑星上で最大級に過酷な自然環境の国であるサウジアラビアを初め各国政府が自然界の均衡の復元に取り組む中、世界は、今日、世界環境デーを迎えた。

非常に多種の生命体が、人間の活動によってある程度変化した環境で生息している。人間活動は、生息地の減少や絶滅の危機、汚染などの原因になるのだ。

2022年の国連食糧農業機関(FAO)の世界の森林に関する報告書には、「行動の選択肢が狭まり、人口増加と多様な願望が物質的資源に対する新たな需要を生む中、自然生態系が回復や維持、持続可能な管理を必要とする重要な資産であることは明白と考えられる」と述べられている。

国連環境計画(UNEP)主導の世界環境デーは、1973年の制定以来、世界的に影響力の非常に強い、環境保護活動のための共通基盤として、この惑星の保護に献身する数百万の人々に世界の環境を巡る課題と試練の想起を促す役割を担っている。

21世紀に入るまでは重要視されなかったり無視されることもあったものの、「自然資源の管理と保全」である自然保護は最近始まった取り組みではない。そして、現在、気候変動の厳しい現実が明らかになるに従って、環境政策の策定がますます緊急の課題となっている。

2021年に開始となった、気候変動と対峙する野心的な国家計画である「サウジアラビア・グリーン・イニシアチブ(SGI提供)」。

それは、時として困難な挑戦となることが明らかになっている。無為無策の導く先を認識した結果、自然が脅かされている時に長期的な目標を定めるという複雑なタスクを進捗させるために、環境インフラを広範囲に深く変化させるガイドラインと規則を定めるために、そして、環境の保護と保全の推進のために、強く断固とした取り組みが行われてきたのだ。

2021年、気候変動と対峙し、生活の質を改善し、未来の世代のために地球を保護するため野心的な国家計画「サウジアラビア・グリーン・イニシアチブ(SGI)」が開始された。このイニシアチブは、環境保護、エネルギー転換、持続可能性プログラムなどの取り組みをその傘下に収め、「保全」という用語を生み出した。サウジアラビア・グリーン・イニシアチブは、2年も経たない内に、すべての野心的なプロジェクトや企業の環境目標、社会的な責任目標の中核的なメッセージになった。

SGIの傘の下で、サウジアラビアは、2030年までにその陸域と海域の30%を保護することに全力を傾けている。その目指すところは明確だ。排出削減、植林、陸海の保護である。そして、77の具体的な取り組みが始まっている。現況では合計66,000平方kmの陸域と海域が保護され、これまでに1,200頭以上の動物が自然環境に戻された。サウジアラビアの約17%の陸と海が保護されていることになる。

生態系、特にその構成要素中の生物は、人間の経済を前進、発展させる資本として機能してきた。これは、サウジアラビアで自然保護活動と開発プロジェクトが連携して進展する中で得られた気づきである。

サウジアラビアの最重要大規模プロジェクト「NEOM」は、その中核に持続可能な開発が組み込まれた、最も意欲的なプロジェクトの1つと考えられている。

持続可能な開発の普遍的かつ実務的な定義は存在しない。その一方で、持続可能な開発は、3つの重要な観点を内包する概念として進化してきた。すなわち、経済的観点、社会的観点、環境的観点である。

経済領域では主として人間の繁栄への寄与が目的とされ、環境領域では生態系システムの全体性と回復力の保護に重点が置かれ、社会領域では人間の生活とその成果の充実、そして、価値と制度の強化が重視されている。

数値データ

  • サウジアラビア国内の15ヶ所で、1,200頭以上の動物が自然環境に戻された。
  • 絶滅が危惧されるアラビアヒョウの保全のために2,500万米ドルの資金が用意された。
  • 2030年までに800万ヘクタールの荒廃した土地を修復する。
  • 2030年までに600万本の植樹を行う。
  • 100億本の植え付けは4,000万ヘクタールの荒廃した土地の修復に匹敵する。
  • 陸域の16%、海域の5%が保護地域となっている。

ネイチャー・リージョン代表のポール・マーシャル博士は、アラブニュースの取材に応じ、NEOMは、26,500平方kmものプロジェクト用地の95%を自然に委ねつつ、「再緑化」や「再野生化」を初めとする意欲的で核心的な保全ミッションに着手したと述べた。

「再生緑化」のために、NEOMでは、土着の植物を植え付け、家畜による景観への圧力を減少させる。これは土壌を保護する作用を持つ。また、1億本の低木や樹木、その他の植物の植え付けは、土壌の劣化を逆転させる。既に10万以上の植物が植えられており、2023年の終わりには100万本の樹木や低木と、草本類が植え付けられる。

再野生化は、かつてその土地に生息していたもののその後減少した動物種をその土地に再導入することを意味する。在来種の動物は、最初は囲いのある広い敷地に導入され、時間の経過と共に景観が回復し動物の個体数が増加してから、囲いを取り払うという複数の段階を経て再野生化は進められる。

「再野生化プロジェクトの初期段階での成否を示す指標は、NEOM自然保護区での最初の繁殖期に確認することができます。プロジェクトにおけるパートナーの国立野生生物センター(NCW)との緊密な連携で、2022年後半に在来種の動物の再導入を初めて行いました。そして、ヌビアアイベックスやアラビアンサンドガゼル、マウンテンガゼル、アラビアオリックスの群れの再導入に成功しました。3月上旬に行った2回目では、赤首ダチョウ10羽、サンドガゼル40頭を再導入しました。私たちは既に素晴らしい結果となることを知っています。最初の繁殖期で合計146頭が生れたのです」と、マーシャル博士は語った。

NEOM自然保護区に再導入されたアラビアンサンドガゼル。2022年12月。(NEOM提供)

この成果には興味を惹かれる。マーシャル博士は、NEOMの動物分布モデルには3つの構成要素が組み込まれていると説明した。「第1の構成要素では、再導入用の健康的で安全な環境を確保するために直ちにアクセス可能な場所の評価を行います。第2の構成要素で分散の潜在的な制限要因を分析し、第3の構成要素で時間経過に伴う分散をシミュレートします」と、マーシャル博士は語った。

「このために、私たちは植物の再野生化チームと連携して、動物たちの食糧源があり得る場所を確認します。こうして、分散のパターンをモデル化して、保護区の再生を計画することが出来るようになるわけです」

「特定の種を保護するために必要な変化というものはありますが、1世紀前の人々が現在の私たちが有しているようなツールや知見、専門知識、能力を有していたとしたら、ヌビアアイベックスやアラビアンサンドガゼル、マウンテンガゼル、アラビアオリックスがこの地域から姿を消すことはそもそも無かったことでしょう。姿を消すどころか、むしろ、活気に溢れた豊かで自立した生態系を構築して繁栄していたはずです。それが、NEOMの土地のあるべき姿で、つまり、私たちの目指している状態なのです」

NEOMは、日曜日にアラブニュースにコメントを送り、その中で、「この繁殖期に生れた幼獣の合計数は31頭でした。内23頭はサンドガゼルで8頭は(ヌビア)アイベックスです。NEOM自然保護区内の動物の総数は現在146頭になりました」と述べた。

その陸域と海域の豊かな生物多様性や驚くべき野生生物、そしてサウジアラビアの空を通過する息を呑むような渡り鳥を想起すると、科学とNEOMやSGIの取り組みが分かち難く結びついているのも当然だと納得できる。

NEOM自然保護区に再導入されるアラビアオリックス。同種がこの地域の砂地の上を再び歩くのは最近100年以上で初めてである。2022年12月。(NEOM提供)

サウジアラビアには、国立野生生物センター(NCW)の管理下の指定保護地域が15ある。その中には、王室保護区や他の政府機関が管理する保護区もいくつか存在する。NCWによると、指定保護地域全体で、1万種以上の動物、500種近くの鳥類、1,800種以上の魚類やクジラ、イルカ、330種以上のサンゴその他多数の生物種が生息しているという。

土地保全と同様に海洋保全も世界で喫緊の科学的課題の1つだと考えられている。宇宙から見た地球は、全体の70%以上が水で覆われた薄いブルーの点なのである。

国連の教育科学文化機関(UNESCO)によると、海洋は、地球規模で気候を制御し、私たちが呼吸する酸素の半分以上を生成する、私たちの「青い惑星」の生命サポートシステムとして機能しているという。それにも関わらず、人類は生命を与えてくれる大洋を不当に扱い、40%近い海洋生態系が損害を被るまでになっている。

紅海のラグーンに面したキング・アブドゥラー科学技術大学(KAUST)では、その周囲の水域こそが同大学の最大にして独自性の最も高い研究室であるとされ、サウジアラビア自体にとっての最も不可欠な戦略的資産の1つと考えられている。

紅海のサンゴ礁。(提供写真)

KAUSTの紅海研究所(RSRC)のマイケル・ベルーメン所長は、最も塩分濃度が高く暖かい海の1つと考えられている紅海は、世界の他の海が近い将来に直面することになる環境的ストレス要因を理解する上での手がかりを与えてくれるのだとアラブニュースに語った。

「紅海の海洋生物は、こうした困難な環境に適応しています。そして、私たちは、この適応を円滑に行う仕組みを解明しようとしています。遺伝子からゲノム、そして行動パターンや生理機能に至るまでのすべてに着目しています」

「紅海の生態系を細心の注意を払って管理することは、保全において最重要なことであり、また、サウジアラビアの宝を最大限健康な状態で何世代にもわたって残していくためにも大切なことです。特に関心が集まっているのは漁業管理の改善と生息地の復元能力です。RSRCの教員は、KAUSTがシュシャ島で実施しているリーフスケープ復元イニシアチブと非常に密に連携しています。このイニシアチブは、ほぼ間違いなく世界でも最も意欲的なサンゴ復元プログラムです」と、ベルーメン教授は語った。

「紅海から得られる知見は世界の他の多くの地域でも有効かもしれません。KAUSTの教育上の目標に沿って、RSRCは、学生たちやポスドクの支援を通じて、将来の海洋科学の第一線級の研究者の育成と教育を進めています」と、ベルーメン教授は付け加えた。

マングローブの海岸の水面上の植物と遠くに浮かぶボートの広画角画像。(提供写真)

世界の人口は増加している。今後30年間で20億人近く増加し、2050年には97億人に達すると推定されている。そして、都市への移住傾向が顕著となっている。

2050年には、世界人口の3分の2以上の70億人近くが都市部に居住することになると予測される。どの程度の人口増加が環境の悪化を引き起こすのかについては、長い年月にわたって議論が続いている。

歴史的経緯や地域の政策、文化的嗜好が、住居地域がいかに狭小な範囲に密集するかまたは分散するかに影響を与える。「必要とされているのは、人的な開発や都市化の進展によって損なわれるのではなく、自然環境を保護し復元するようなソリューションです」と、マーシャル博士は語った。

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