働き手の安全と健康を守るための労働安全衛生法(安衛法)の対象に、フリーランスら個人事業主も加えられる見通しになった。仕事を発注した企業などに事故の予防や報告を義務づける。安衛法は原則、雇用された「労働者」だけを保護してきたが、働き方の多様化を受けて対象を広げる。
厚生労働省が31日の有識者会議で報告書案を示し、大筋了承された。今後詳細を詰め、必要な法令改正の手続きに入る。
事故で死亡やけが、労基署への報告義務
フリーランスが増え、事故のリスクが問題視されてきたが、今はそうした事故の実態を把握する仕組みがない。
そこで安衛法の規定を見直し、労働者と同様にフリーランスらが業務上の事故で死亡するか4日以上休業するけがをした場合、仕事を発注したり現場を管理したりする企業などに労働基準監督署への報告を義務づける。
違反しても罰則はないが、是正勧告など行政指導の対象になる。一方、一般消費者から仕事を請け負ってけがをした場合などは、フリーランスら本人が労基署に情報提供するよう求める。
フリーランスが過重労働で脳・心臓疾患や精神障害になった場合に、本人から報告できる仕組みも整備する。
危険な場所への立ち入り禁止なども義務づけ
国はこうした報告を集計・分析して公表し、業界団体などに災害防止対策を進めるよう促す。
また安衛法では企業などに、災害発生時に労働者を作業場から退避させたり、危険な場所を立ち入り禁止にしたりすることを義務付けているが、その保護対象をフリーランスらにも広げる。作業現場に足場や機械を設置した事業者には、労働者の安全を保護する義務があるが、その対象にもフリーランスらを加える。
フリーランスら自身にも災害防止策を義務づける。一部の機械を使う場合の定期自主点検の実施や、危険な業務を行う場合の講習の修了など、企業や労働者に義務づけているのと同じ内容だ。
安衛法をめぐっては、アスベスト被害に関する訴訟で最高裁が一昨年、同じ現場で働き危険性も同じなら、「一人親方」と呼ばれる個人事業主も保護対象とすべきだと判断。それを受けて厚労省は今春、アスベストなどを扱う労働者を保護する規定の対象を、個人事業主にも広げた。さらにそれ以外の職種への対応も必要だとして、有識者会議で議論を続けていた。(田幸香純)
有識者会議の報告書案のポイント
【事故の把握】
・個人事業主が事故にあった場合、仕事を発注した企業などに国への報告を義務づける
・個人事業主が過重労働で脳・心臓疾患や精神障害になった場合は、本人が国に報告できる仕組みをつくる
・国は事故の情報を分析して公表し、業界団体などに防止対策を促す
【事故防止の対策】
・一部の作業について、企業に義務づけられた「労災を防止するための措置」の対象を個人事業主にも広げる
・個人事業主にも現場に持ち込む機械の定期自主点検を義務づける
・個人事業主にも危険有害な業務に関する安全衛生教育の修了を義務づける
・プラットフォーマーが危険有害な業務を個人事業主に行わせる場合に配慮すべき内容を明確にする
【健康管理】
・国は個人事業主に年1回の健康診断を促す
・健康診断の費用は、発注企業が支払う報酬の中に盛り込むよう促す
・発注企業は、長時間労働をしている個人事業主から求めがあれば、医師による面接指導の機会を作る
からの記事と詳細 ( フリーランスも労働安全衛生法の対象に 厚労省案を有識者会議が ... - 朝日新聞デジタル )
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