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Friday, August 11, 2023

宇宙と地球の環境保護に必要な「惑星保護方針」とは? - GIZMODO JAPAN

宇宙探査には、宇宙を地球からの物質による汚染(フォワード・コンタミネーション)と地球を宇宙からの物質による汚染(バックワード・コンタミネーション)から保全する惑星保護という取り組みがあります。

以下は惑星保護のルールを作る組織がFrontiers Science Newsに寄稿した記事です。


太陽系のどこかに存在する生命の探索が激化していくに連れて、宇宙探査を安全かつ持続可能に保つ必要性も増しています。

惑星保護は、これまで以上に人類の大きな責任となっています。しかし、惑星間ミッションから地球に帰還する宇宙機によって異星の物質が地球に持ち込まれないようにすることだけが問題ではありません。

惑星保護とは、科学的研究を台無しにしないために、私たちが訪れる惑星や他の天体を手つかずのままにしておくことでもあります。

惑星保護問題の方針を練ってそれらを最新の状態に保つのは、国際宇宙空間研究委員会(COSPAR)の惑星保護パネルの責務です。

Frontiers in Astronomy and Space Sciencesに掲載された記事では、COSPARの傘下にある専門家たちの国際的な組織である同パネルが、その役割と月・金星・火星・小天体への方針に関する最近の検討事項を含め惑星保護方針について解説しています。

そして今回、同パネルをまとめる委員長のAthena Coustenis博士及び副委員長のNiklas Hedman氏とPeter Doran教授が、この取り組みがこれから深宇宙を探査する者にとって非常に重要である理由をthe Frontiersのニュースサイトで説明してくれました。

ロボットローバーが火星の地表で土壌サンプルを採取して生命の痕跡を探しているのに、代わりに地球からはるばる持ち込まれた細菌を見つけたとします。

その後の研究への影響は計り知れません。もしくはエウロパやエンケラドゥスのような氷衛星の地殻を掘り抜くプローブが、その地下海に地球からの有機汚染を注いでしまったら…?結果として、その天体にいる生命のさらなる研究を脅かしてしまいます。

それと同時に、もしそういった天体に現存ないし絶滅した生命が生きていたとして、私たちの生物圏への危険を防ぐ然るべき手段なしにサンプルを持ち帰ってしまうと、人類にとっての重大なリスクにつながる可能性があります。

したがって、宇宙ミッションによる生物学的汚染と有機汚染という有害な移入を防ぎ、将来の科学探査と発見が新たに調査する天体に悪影響を与えないように気を付ける国際的な方針が必要になります。同じように、地球に持ち帰られる異星の物質にも手順が確立されるべきです。

それに宇宙探査は急成長を遂げていて、今やミッションが各国の宇宙機関や非政府及び民間セクターによって運用されていますから、すべてのミッションがこの方針に従い、関連する要件や指針が全関係者と共有されるようにすることがますます重要になってきます。

宇宙旅行のルールブック

では、地球を潜在的な脅威から保護し、他の天体にいる生命の探索を脅かさない、つまりバックワード及びフォワード・コンタミネーションから守るような方針をどのように起草するのか?

誰が最新の研究成果を分析して、将来のミッションのニーズと目的そして地球の安全性に十分適したガイドラインを用意する権限と専門性を持っているのか?

宇宙探査を行なう国々のできるだけ多くがこの方針を受け入れ、貢献と順守できるようにするにはどうすればいいのか?

そこで、COSPARの惑星保護方針の出番です。

数カ月前にFrontiersに掲載された記事『Planetary Protection: an international concern and responsibility(惑星保護:国際的な懸念と責任)』では、ここで提示した疑問を取り上げています。

COSPAR(国際宇宙空間研究委員会)は、1958年に国際学術連合会議(現・国際学術会議)の要請で設立されて以来、1960年代初めから地球外探査による汚染の問題への助言を提供するために活動しています。

同委員会はこの数十年の間に、惑星保護方針を生物学的汚染と有機汚染から保護する国際標準として発展させ、1967年の国連宇宙条約第9条順守のガイドラインとして役立ててきました。

COSPARはこの他の宇宙関連の問題について科学的な議論を行なうための国際的な公開討論の場も提供しています。

惑星保護方針は、宇宙ミッションの目的に応じて5つのカテゴリを定義しています。これらは惑星・彗星・氷衛星への周回ミッションやフライバイの実行から、天体に着陸して地球にサンプルを持ち帰ったり、そういった惑星を探査したり、環境の分析や現存ないし絶滅した生命の痕跡の探索したりするよう設計されたものまで多岐にわたります。

こういったカテゴリに紐づくのが、適用される汚染管理によって程度の差がある厳しさの要件です。同方針は定期的に評価され、急速に進化している宇宙探査セクターと併せて、最新の科学成果のデータでアップデートされます。

このため、COSPARは1960年代初頭から国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)と、とりわけ惑星保護の分野では緊密な協力関係にありました。

国際的な関心事

パネルのまとめ役とメンバーたちは、COSPARの事務局によって正式に指名されます。現在のメンバーは25名で、12の宇宙機関の代表者と、科学コミュニティからの同じ人数の専門家、充て職で構成されています。

COSPAR科学総会でのワークショップ、トピカルミーティング、セッションを企画することで、パネルは方針のベストプラクティス及び改良やアップデートについて情報交換するための国際的な公開討論の場を提供。ミーティングには、科学者や産業及び民間セクターの代表者、利害関係者、オブザーバーを歓迎しています。

パネルの国際色豊かな性質によって議論(民間セクターとの活発な対話の奨励を含む)が可能になり、勧告を行なう際の情報に基づくバランスの取れたアプローチが保証されます。

パネルの活動は、太陽系の持続可能な探査を安全なものにするために迅速な対応と専門知識を行使すると同時に、宇宙ミッションの個々のニーズを扱います。

方針がアップデートされた際には、パネルが刊行物と国際会議でのプレゼンを通して各国の宇宙コミュニティに知らせています。

また、パネルは宇宙研究についてコミュニティからの情報も歓迎。新たな研究、地域調査、ワークショップや焦点を絞ったカンファレンスの協賛など何らかの方法で、宇宙のステークホルダーをアシストします。

要するに、惑星保護に関して特別な注意を要するどんなプロジェクトであっても、フォワード&バックワード・コンタミネーションを防ぐ情報とガイドラインを取り揃えているCOSPARの惑星保護方針を見れば、十分事足りるという話です。

Source: COSPAR, Frontiers(1, 2), International Science Council, United Nations Office for Outer Space Affairs(1, 2)

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