のどごしの良さとほのかな甘みが人気の栃木県栃木市名物「出流(いずる)そば」が、地域と商品の名前を組み合わせて商標化し、ブランドを保護する特許庁の「地域団体商標」に登録された。「足利銘仙」(足利市)、「天明(てんみょう)鋳物」(佐野市)などに続いて県内12件目、市内では初登録となる。関係者は観光活性化や地域振興に期待を膨らませ、5日に市役所を訪れて報告会を行う予定だ。(梅村武史)
出流そばは、市北西部の山間地にある出流山満願寺(出流町)の門前に広がるそば店8軒で提供されている。江戸時代、寺周辺の宿泊施設が参詣者や猟師にそばを提供したのが始まり。同寺奥の院の鍾乳洞から湧き出る弱アルカリ性の名水が独特の味わいを生み出すとされる。1960年代に多くの宿泊施設がそば店に変わった。
出流そばの代名詞は大迫力の「一升(いっしょう)そば」。直径50センチの竹ざるに一升分のそばを盛る。老舗の福寿屋の店主、石川賢一さん(53)は「大勢で箸でつついて食べるのが醍醐味(だいごみ)」と笑う。
2006年に導入された特許庁の「地域団体商標」は、「地域名」と「商品(サービス)名」を組み合わせて地域ブランドを保護する制度。不正使用時の法的対抗力が強まり、ライセンス契約などビジネスチャンスの拡大が期待できる。
出願者は栃木商工会議所。そば店主らで組織する「出流観光会」と協力して22年8月に出願し、今年4月に登録が認められた。
出流そばブランドを生かしたインバウンド(訪日客)需要への対応やふるさと納税の返礼品化などを視野に入れており、同会議所の東郷彬(あきら)さん(39)は「参詣者の減少や高齢化が地域の悩み。登録を起爆剤に注目を集める仕掛けを考えていく」と話した。
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