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Monday, May 4, 2020

自粛疲れが引き起こす「家庭内虐待」の不条理 - 東洋経済オンライン

夫婦げんかが"思わぬ形"で子どもを苦しめる

相談を呼びかけるポスターを掲示する江戸川区児童相談所の職員

新型コロナウイルスの感染が拡大する中、親が子供に暴力を振るうなど虐待に関する相談が、児童相談所に相次いで寄せられている。自宅でともに長期間過ごしていることがストレスになっているとみられる。緊急事態宣言の延長により東京都内の外出自粛は続くことになり、専門家は「誰かに悩みを打ち明けるなどして、ストレスを和らげることが大事だ」とアドバイスする。(山田睦子、鍜冶明日翔)

4月下旬、東京都江戸川区の民家から110番が入った。警察官が駆けつけると、室内に親子が争った跡がある。「『宿題をやれ』と言ったのにやらない」。親は子供に手を上げた理由をそう説明した。児童虐待の疑いがあるとして、江戸川区児童相談所に通告された。

4月1日に開設された同児相は28日までの4週間で、135件の虐待相談に対応した。このうち、「スマートフォンで遊んでばかり」などの理由で親が子供に暴力を振るう「身体的虐待」は28件。子供を一時保護するなど緊急の対応に踏み切った事案もあった。

また、ゲームに熱中する夫に妻が注意したことがきっかけで殴り合いになるなど、ささいなことが原因の夫婦げんかも多い。子供が夫婦げんかを前にして、毛布をかぶって隠れていたという事案もあり、こうした「心理的虐待」は78件に上る。対応件数は日を追うにつれて増えており、同児相の上坂かおり援助課長は「外出できずにイライラ感が募っているうえに、家族全員が家にいて逃げ場がない」と分析する。世田谷区児相でも、夫婦げんかに驚いた子供の泣き声を心配した近隣住民から通報が入るなど、4月1~24日に約60件の虐待相談に対応したという。

こうした虐待事案の増加を懸念し、厚生労働省は4月10日、全国の自治体に対し、児相と学校の連携を強化し、虐待リスクのある子供の状況を把握するよう求めた。しかし児相職員が家庭訪問すると、感染拡大を理由に面会を断られるケースが続出。そこで江戸川区児相では無料通信アプリ「LINEライン」のビデオ機能で、子供本人の姿を直接確認する試みを始める。また別の区では、ネグレクト(育児放棄)の傾向がみられる家庭に対し、原則休園としている保育園の利用を促すなどしている。担当者は「親子だけで過ごすとストレスが増大する恐れがある。親と子供の双方の負担をできるだけ軽減したい」と話す。

我が子を虐待しそうになったら、どうすればいいのか。日本アンガーマネジメント協会の安藤俊介代表理事によると、少しいらつく程度でも、不安や疲れなどのストレスがたまっていると、怒りが爆発することがあるという。安藤代表理事は「余裕がなくなると、相手に厳しくなりがち。この状況で子供の勉強が進まないのは当たり前と考えるなど、自分にも相手にも『甘くなる』ことが大切」と話す。

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