大規模開発事業について有識者が環境影響評価(環境アセスメント)を行う「県環境影響評価技術審査会」(会長・伊藤歩岩手大教授)は26日、5月に商業運転を開始した「住田遠野ウインドファーム(風力発電所)」の現地調査を行った。同審査会が稼働後の事業を調査するのは初の試みで、環境アセスの過程で求められた絶滅危惧種のイヌワシを保護する衝突回避策などの実施状況を確認した。(西口大地、西村魁)
同発電所は、遠野市と住田町にまたがる山地の尾根一帯に出力4200キロ・ワット、高さ最大114メートルの風力発電機27基を設置。事業者のグリーンパワーインベストメント(GPI、本社・東京都港区)は、1年間で一般家庭8万4000世帯分の発電量を見込んでいる。
環境アセスメントの一環で事業者が実施した調査では、同事業の計画区域内にイヌワシの餌場が含まれることが確認された。県や国の審査会は、イヌワシが風車に衝突する「バードストライク」の懸念を指摘し、計画の改善を要請。経済産業省の勧告で、事後調査や環境監視の実施が求められた点を踏まえ、県の審査会が今回、事業者の了解を得て任意での現地調査を行った。
この日は技術審査会の委員2人が現地を訪れ、GPIの担当者の案内のもと、▽発電機の視認性向上のため、ブレード(羽根)の先端を塗装▽発電機周辺でイヌワシの餌となる動物が生息しにくいよう、造成地での砂利の敷設▽営巣地から見て発電機の手前に、代替の餌場となる草地を確保――などの対策を確認した。
調査に参加した伊藤会長は「事前の環境影響評価の段階で(影響を)避けることはもちろん、事後にも対策の結果をデータとして出してもらい、専門家にしっかり評価していただくことが大事」と強調。今後の審査会で、継続調査の必要性を検討する考えを示した。
環境アセスの対象となった風力発電事業の事後調査は現状制度化されておらず、事業者側に受け入れの義務はないが、3月に公表された環境省の「環境影響評価のあり方に関する検討会」の報告書でも、国への事後調査結果の報告を義務付けるべきだと指摘された。
昨年度、県内の環境アセス開始手続きは過去最多の8件に上った一方、イヌワシや景観などへの影響が懸念される事業計画が相次ぎ、県環境保全課の阿部茂・環境影響評価・土地利用担当課長は「風力発電の適地への導入とリスク回避の両立のために、事後もしっかりチェックしなければならない」としている。
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