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Wednesday, May 27, 2020

星港PIL、債務繰り延べで合意。政府系ファンド投資へ|日本海事新聞 電子版 - 日本海事新聞

 印刷【速報】2020年05月28日デイリー版1面
政府系ファンドのテマセク・グループと投資に関する協議を開始する(写真=PIL 本社玄関)
政府系ファンドのテマセク・グループと投資に関する協議を開始する(写真=PIL 本社玄関)

 経営状況が悪化しているシンガポールのコンテナ船社パシフィック・インターナショナル・ラインズ(PIL)が財務再建に向け新たな方針を打ち出した。同社が26日、シンガポール証券取引所に提出した資料によると、主要債権者の金融機関15行と債務の繰り延べを行う「リプロファイリング」で合意。15行はPILの負債総額の約97・6%を占める。さらに、政府系ファンドのテマセク・グループとPILへの投資に関する協議を開始する。ただし、今回の繰り延べや投資が実行できたとしても、「今後、競争の激しいコンテナ船事業で同社の本業の立て直しにつながるのか未知数」(日本の船主関係者)との指摘もある。

 PILが主要債権者とこのほど合意したリプロファイリングには、12月31日までの元金・利息の支払い免除と、同日までの強制執行停止が盛り込まれている。

 残る2・4%の債権を保有する2金融機関とも同様のリプロファイリングに向けた協議を継続中。うち1社は今月11日、約1264万米ドル(約13億円)を10営業日以内に支払うことを求める督促状をPILに送付しているという。

 PILは年内に満期を迎える6000万シンガポールドル(約45億円)の固定金利債を含め、今後数カ月の間にさらなる債務不履行が発生する可能性があるとした。

 PILは同時に、政府系ファンドのテマセク・ホールディングス傘下の投資会社ヘリコニア・キャピタル・マネジメントとの間で投資に関する独占契約を締結したことも明らかにした。ヘリコニアは今後6カ月間で、PILへの出資について検討を行う。ヘリコニアはシンガポール政府系ファンド、テマセク・ホールディングスの100%子会社で、事実上の政府支援に近い動きだ。

 PILの経営悪化は昨年から顕在化したが、一部遠洋航路で協調配船を行うなど関係の深い中国船社による救済合併などもうわさされていた。自国主要産業のコンテナターミナル(CT)への影響なども懸念したシンガポール政府が自国最大のコンテナ船社の救済に動き出したとみられる。

 ヘリコニア会長のリム・ホウ・テック氏は、シンガポール船社ネプチューン・オリエント・ラインズ(NOL)に2005年まで在籍し、グループ副CEO(最高経営責任者)などの要職を務めた。テマセクは16年、当時自国最大のコンテナ船社だったNOLを仏船社CMA-CGMに売却している。

■本業立て直し急務

 【解説】PILは昨年から主力銀行を含め、元本の繰り延べを複数の金融機関と交渉してきた。

 今年に入り、経営状況の悪化が鮮明となり3月には1万2000TEU型コンテナ船6隻を合計約600億円で売却。航路運営でも主力の北米航路から撤退、南太平洋での配船事業をネプチューン・パシフィック・ラインへ売却するなどリストラとキャッシュ確保を並行して進めた。

 それでも現時点で約100隻のコンテナ船を有し26隻をBBC(裸用船)で契約。このうち少なくとも5隻以上が日本船主からの用船で6月から用船料の95%カットを通知している。

 同社のS・S・テオ会長兼社長は「われわれは経営資源の最適化と新たな事業機会模索を進めている」としてアジア、中東、アフリカ、南米に経営資源を集約する姿勢をみせる。

 しかし、日本の一部の関係者は、PILが4月に出した声明文で同社が経営悪化した理由として、財務的な負担となっていた新造コンテナ船ではなく、新型コロナウイルスの影響を理由にしていたことに疑問を抱いているのも事実。「仮に今回の債務繰り延べや政府系金融の投資が実現したとしても、競争の激しいコンテナ船事業でコロナ収束後に本業の立て直しは難しいのではないか」(金融関係者)との声も出ている。

(山本裕史)

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