米国航空宇宙局(NASA)は、探査機「オサイリス・レックス(OSIRIS-REx)」が10月20日に実施した小惑星ベンヌ(Bennu)のサンプル採取ミッションで、十分な量の物質を採取したと発表した。実のところ、探査機のサンプル採取容器がいっぱいで、ふたをしっかりと閉じることができず、採取した物質の一部が宇宙へ漏れ出てしまっているという。「容器内の物質があまりにも多いので、現在サンプルが流出している状態です」とNASAのトーマス・ザブーケン科学局長は10月23日に語った。
オサイリス・レックスは、地球から約3億2000万キロメートル以上離れた小惑星ベンヌを、ベンヌ周回軌道上から2年近く調査していた。10月20日、同探査機はベンヌに降下し、6秒間の接触で表面から岩石サンプルを採取した後、再び宇宙に向かって飛び立った。
ミッションの目標は最低60グラムの物質を安全に採取することで、NASAは一連の手順を実施してそれだけの量を採取できたか検証するることになっていた。その手順には、探査機搭載のカメラを用いてサンプル採取容器を観察するプロセスと、10月24日に予定されていた回転操作で慣性モーメントを測定してサンプルのおおよその質量を推定するプロセスも含まれていた。
しかし、実際には、過去数日間にわたって採取容器から粒子が宇宙に流出していることが、機体搭載カメラにより明らかになった。「かなりの量のサンプルが流出しているのが確認されています」とミッションの主任研究員であるダンテ・ローレッタは10月23日に述べた。結局、今回のサンプル採取で、あまりにも多くの物質を採取していたことが判明した。オサイリス・レックスが採取できる上限である2キログラムの物質を採取した可能性もある。約400グラムの物質がカメラから見えているようだ。採取容器のふたがきちんと閉まらず、最大3センチメートルの大きさの欠片がはまり込んで開いたままになっており、それによってできた幅1センチメートルの隙間から物質が流出しているという。
オサイリス・レックスがベンヌの表面に接触した時に、採取ヘッドが24センチメートルから48センチメートルの深さまで入り込み、その結果、大量の物質が採取されたと考えられる。
とは言え、それほど深刻な問題ではない。一部の物質が流出したのは明らかに懸念すべきことだが、流出のほとんどが10月22日のアームの動きによるものだ(微小重力環境では、物質は流体のように振る舞うため、アームが少し動いただけでサンプルが旋回し、その結果、物質が容器から流出する可能性がある)。ローレッタ研究員は、これまでに10グラム近くの物質が流出したと推定している。大量に採取できたことを考慮すれば、この流出量は比較的少量だ。アームは現在「停止」位置についているため、物質はよりゆっくりと動いている。従って、さらなる流出は最小限に抑えられているはずだ。
NASAは、ミッションで当初予定していた質量測定の操作を見送ることになった。回転操作によりさらなる物質流出が起こることは間違いないことに加え、当初目標としていた60グラムを優に超える質量の物質を採取できたとNASAは確信しているからである。その代わり、予定を早めて、10月26日にサンプルを格納する予定だという。サンプルを無事格納したら、オサイリス・レックスは2021年3月にベンヌを去り、2023年にサンプルを地球に持ち帰ることになっている。
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