石炭火力発電の「段階的削減」 /気温上昇を「1. 5度に抑える」
英グラスゴーで開催されていた国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)は13日、閉幕した。最終日、石炭火力発電の「段階的削減」に向けた努力を加速し、「産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑える」という目標実現に向けた努力を求めることなどを盛り込んだ成果文書「グラスゴー気候合意」を採択した。=8面に関連記事
事情さまざま 交渉・譲歩
COP26は10月31日に開幕。石炭火力の扱いなどを巡って交渉が難航し、11月12日までの予定だった会期を1日延長した。
成果文書では、二酸化炭素(CO2)排出削減対策がされていない石炭火力発電の「段階的削減」(フェーズダウン)と、化石燃料への非効率な補助金の「段階的廃止」(フェーズアウト)への努力を加速させることを各国に求めた。草案段階では石炭火力についても「段階的廃止」としていたが、インドの提案で採択直前に「段階的削減」へ表現が弱められた。
気候変動による海面上昇の影響が大きいマーシャル諸島の代表は「石炭についての約束は誇りを持って国に持ち帰ることができると期待していただけに、その明るい部分がかすんでしまったことに深く傷ついた」と嘆いた。
COP26のシャーマ議長はグラスゴー気候合意の採択直前、「深い失望は理解している。しかし、このパッケージ(まとまりとしての合意)を守ることも重要だと皆さんはお気づきだと思う」と言って声を詰まらせた。経済状況や利害の異なる参加国を枠組みにつなぎ留めるため、譲歩を繰り返してきた気候外交の困難さを象徴する場面だった。
合意案は全会一致が原則 気候変動危機を共有・解決する場
気候変動はみんなが直面している問題。COP26で成果文書を採択するのに、なぜもめるの?
例えば、石炭火力の廃止に強く反対したインドは、電力の約7割を石炭火力に依存している。彼らは、気候変動が問題になる前にCO2を排出して豊かになった先進国が、これから発展しようとする国々に廃止を押しつけるのは不公平だとみているんだ。
解決策は示されなかったの?
最終的な合意案は、全会一致が原則なので、各国の交渉担当者が妥協点を探り合ったんだ。そのなかで、温室効果ガスを削減した実績を「排出権」として融通する市場メカニズムの仕組みが初めて採択されたんだ。
スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさん(18)は「COP26は失敗」というよ。
グラスゴーの中心広場で5日、世界から集まった若者中心の約2万5000人のデモがあった。そこでグレタさんは「世界のリーダーたちは積極的に抜け穴を作って、利益を得るための枠組み作りをしている」と批判したんだ。
確かに、気候変動対策はなかなか進まないよね。
でも、気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」で掲げた産業革命前からの気温上昇幅を「1.5度に抑える」という努力目標を達成するため、世界で脱石炭の流れが加速していることは確かだよ。異なる利害関係を持つ世界の国や地域が、気候変動がもたらす危機を共有して解決していく場を持つことは重要だ。それぞれの主張の背景には、その国の人たちの生活がある。だからこそ、妥協点を見つけ出し、全会一致で決めたことに重みがあると思うんだ。
■KEY WORDS
【市場メカニズム】
二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの「排出権」を国家間でやり取りする仕組みのこと。例えば、A国が技術移転や財政支援などをしてB国の排出量を減らした場合、B国での削減分を「排出権」として認定する。その削減分を「A国で減らした」とみなしてA国の排出量算定のときに利用したり、別の国にその排出権を売ったりすることができる。
【脱石炭の流れが加速】
議長国の英国が3日、CO2排出量が多い石炭火力について2030~40年代に廃止するという声明を発表した。40超の国や地域が合意し、日本が石炭火力輸出を計画するベトナムのほか、ポーランドなど、石炭火力の新規建設・投資を停止することを初めて表明した18カ国が含まれる。一方、石炭火力の発電が多い日本をはじめ、中国やインド、米国は参加しなかった。
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