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Tuesday, June 21, 2022

カナダ政府、デジタル分野に関わる包括法案を議会に上程、個人情報保護を強化(カナダ) | ビジネス短信 - ジェトロ(日本貿易振興機構)

カナダ政府のフランソワフィリップ・シャンパーニュ・イノベーション・科学・産業相とデイビッド・ラメッティ法相兼司法長官は6月16日、カナダのデジタル憲章の実施を推進する「2022年デジタル憲章実施法案」を議会に上程したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。民間部門向けのプライバシー法を大幅に強化した上で、人工知能(AI)の責任ある開発と利用のための新しいルールを策定するもの。同法案には、(1)消費者プライバシー保護法案、(2)個人情報・データ保護裁判所法案、(3)AI・データ法案の3つが含まれる。

現政権を担う自由党は、2021年に現行の個人情報保護関連法の改正案を議会に上程したが、議会解散に伴い、廃案となっていた。今回の本法案では、新たにAIシステムに焦点を当てた部分を加えた。

消費者プライバシー保護法案では、カナダ国民のプライバシーを保護すると同時に、革新的な事業により、組織が明確な規則の下で利益を得ることを保証するため、以下が盛り込まれた。

  • 組織によって取り扱われる個人情報の管理と透明性の向上
  • 自己情報をある組織から別の組織へ安全に移動できるような自由の付与
  • 自己情報が不要となった際に、個人が廃棄要求できることの保証
  • 未成年者の情報を扱う組織の権利制限および、同組織に対するより高い基準順守の義務付けなど未成年者に対する保護強化
  • 企業に対するデータ収集や個人情報の使用停止命令権限を含む、カナダ個人情報保護委員会への広範な命令権の付与
  • 違反した組織に対する全世界の売上高の5%または2,500万カナダ・ドル(約26億円、Cドル、1Cドル=約104円)のいずれか高い金額を上限とする罰金制度の導入

また、個人情報・データ保護裁判所法案では、消費者プライバシー保護法の施行促進のための新たな裁判所の創設が可能となるほか、AI・データ法案では、AIシステムの開発と利用における信頼を強化するため、以下のルールを導入する。

  • 影響力の大きいAIシステムの開発・利用に際して、潜在的な危害やバイアスを特定・是正するよう保証し、カナダ国民を保護する
  • 同法の監督責任を持つイノベーション・科学産業相を支援するAI・データコミッショナーを設置し、企業のコンプライアンス監視、第三者による監査命令、他の規制当局や執行機関との情報共有を行う
  • AI開発用に不正取得したデータの使用がみられる場合や、AIの「無謀な」使用が深刻な被害をもたらす場合、AIの使用で実質的な経済的損失をもたらす不正な意図がある場合を対象とした、明確な刑事上の禁止事項と罰則を提示する

カナダ政府による今回の発表を受け、カナダ商工会議所のシニア・バイス・プレジデントであるマーク・アグニュー氏は同日、現在の個人情報保護制度の施行開始は約20年前であることを例に挙げ、今回の政府の動きを歓迎しつつ、「カナダには21世紀のプライバシーに関する法律が必要だ。今こそ法律施行に向けて取りかかり、これ以上遅れることなく法案を成立させるべきだ」とコメントした。

ただし、法案が上程された下院議会は間もなく夏期の休会に入ることから、審議は秋口以降になるとみられている(「グローブ・アンド・メール」紙6月16日)。

(飯田洋子)

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