児童相談所が親の同意なしに子どもを一時保護する際に、裁判所が関与する仕組みが導入されることになった。命を守ることを最優先にした運用が求められる。
一時保護は、虐待などのリスクが高い場合に、子どもの安全を優先し、親から引き離す制度だ。
実施は年間5万件前後に上り、このうち1割程度が新しい仕組みの対象になるとみられる。
現在も児相の権限で一時保護できるが、親が反発してトラブルになることも少なくない。裁判所が認めることで、手続きが取りやすくなると期待されている。
児相の判断が適切かどうかを、裁判所が中立的な立場でチェックできるようになる。親権や、子どもの行動の自由の制限を伴うため、国連の子どもの権利条約にも、司法が関与する必要性が明記されている。
今後、運用方法を定め3年以内に実施する。ただ課題もある。
家庭の問題を扱う家裁が主に担当するが、地裁や簡裁でも対応する可能性がある。ばらつきが出ないよう、判断基準を明確にしておく必要がある。
もともと一時保護は、児相が家庭環境などを調査する時間を確保して、虐待リスクを見極めるための措置である。
判断が難しいケースもある。骨折や頭部の損傷は、転倒事故などによっても生じるためだ。兵庫県明石市では男児が1年以上にわたって一時保護されたが、虐待は確認されなかった。
裁判所が関与することで、こうした例を防ぐこともできるのではないか。
新しい仕組みを機能させるためには、児相の体制強化が必要だ。
保護の許可を得るには資料提出が必要となるが、児相は今でさえ慢性的な人手不足である。司法手続きに慣れた専門職の助言も重要だが、常勤の弁護士がいる児相は1割未満にとどまる。
国は、子どもの保護に当たる児童福祉司を増員するとともに、弁護士と連携しやすい環境を整えるべきだ。
児相が虐待リスクの的確な判断に努め、裁判所がチェックする。それぞれが役割を果たすことで、制度の信頼性が高まる。それが、子どもを守ることにつながる。
からの記事と詳細 ( 社説:一時保護への司法関与 虐待から子供守る運用を - 毎日新聞 )
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