チリ政府は7月1日、税制改革案を発表した。OECDの発表によると、チリの税収のGDP比(2019年)は20.7%で、加盟国平均の33.8%を大幅に下回っている(2022年6月30日記事参照)。本税制改革は、年金や社会保険制度の拡充を目指す現政権の財源確保策としても注目を集めるが、政府は増税の対象となる個人は、国民のわずか3%の富裕層のみである点を強調し、富の再配分によって中間所得層や貧困層、中小零細企業などを保護する重要性を主張している。主な内容は次のとおり。
・第1カテゴリー所得税(法人税、注1)の引き下げ
標準の納税方式(14-A方式)における法人税率を27%から25%に引き下げ。
・開発税(Tasa de Desarrollo a las empresas)2%の導入
上述の法人税率の引き下げ分に相当。自社やサプライチェーン内の生産性の向上に資する投資(イノベーションの創出や、先端技術の導入などが例として挙げられている)を実施し、政府の認定を受けた場合には控除が可能。
・資本所得税(Impuesto a las rentas del capital)
自然人または非居住者が受け取る株式の配当に対して適用される(税率は22%相当)。
・第2カテゴリー所得税(個人所得税)の増税
月収が403万ペソ(約56万4,200円、1ペソ=約0.14円)を超える場合のみ、税率を3~5%引き上げ。
・富裕税
チリに居住地あるいは住居を持つ自然人約6,300人が対象で、その純資産(国内外に保有している出資金、不動産、車両、金融資産なども加味)に対して課税。6,000UTA(注2)超1万8,000UTA以下の場合1%、1万8,000UTA超の場合1.8%。
・鉱業ロイヤルティーの増税
年間5万トンを超える精銅の生産を行う場合に適用される従価税。5万トン超20万トン以下の場合1~2%、20万トンを超える場合1~4%の課税。さらに、営業利益率に応じて2~32%を課税。いずれも銅価格を加味して税率が変動する。
今回の税制改正が実現した場合、GDP比4.3%に相当する税収増が見込まれる。政府によると、これらの改革は4つの法案に分けて国会に提出すると発表しており、2022年7月中に提出される法案には法人税や富裕税が含まれる予定となっている。
(注1)現在の税制については2020年10月21日付地域分析レポート参照。
(注2)UTA(UNIDAD・TRIBUTARIO・ANUAL)は年間課税単位。当該月のUTMを12倍にしたもの。2022年7月のUTAは69万8,976ペソ。
(岡戸美澪)
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