Research Press Release
Nature Communications
2022年8月10日
Environment: Sharks, skates and rays at risk in protected areas
地中海に生息するサメ類、ガンギエイ類とエイ類の絶滅危惧種は、「深刻な危機」にある絶滅危惧種を含めて、非保護地域よりも海洋保護区で捕獲される頻度が高いことを示唆した論文が、Nature Communications に掲載される。この知見は、海洋保護区の管理を改善して、保全の成果を確実に得られるようにする必要性を強調している。
かつては地中海に広く分布していたが、乱獲により減少してきた板鰓(ばんさい)類(サメ類、エイ類、ガンギエイ類を含む魚類の亜種)を保全するための手段として、海洋保護区と部分保護区が推進されている。これらの魚類種に対する零細漁業の影響は、地中海ではほとんど研究されておらず、漁船の追跡装置がないために利用できる漁業データがほとんどない。地中海で操業している漁船の大半を占める零細漁業は、板鰓類に影響を与えていることが知られているが、地中海の部分保護区によって板鰓類種を保護できているのかどうかを明らかにすることは未解決の課題となっている。
今回、Manfredi Di Lorenzoたちの研究チームは、写真によるサンプリングと画像解析を用いて、フランス、イタリア、スペイン、クロアチア、スロベニア、ギリシャの11カ所で行われている1,256件の零細漁業操業を網羅したデータベースを構築した。そして、Di Lorenzoたちは、統計モデルを用いて、絶滅危惧種の捕獲量が非保護地域よりも部分保護区で多いことを示し、零細漁業がこれらの種に影響を与えている可能性があるという見解を示している。
Di Lorenzoたちは、板鰓類の絶滅危惧種を保護するうえで部分保護区が重要な役割を果たしているが、板鰓類種の保全のためには追加的な管理措置と法令遵守の強化が必要だと主張し、零細漁業が圧倒的に多い世界の他の地域でも管理を改善することを推奨している。
doi:10.1038/s41467-022-32035-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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