開発したたんぱく質結晶の保護(ゲル化)手法(学習院大提供)
学習院大学の友池史明助教らの研究チームは、たんぱく質を結晶化した後にハイドロゲルで包む結晶の新しい保護手法を開発した。たんぱく質結晶は物理的な衝撃に弱く、創薬に欠かせないたんぱく質の立体構造情報を得るために行うX線結晶構造解析時などに結晶が壊れやすい問題があった。たんぱく質結晶をゲルで保護することで構造解析の精度が向上し、創薬のスピードアップにつながる。
友池助教らはアルギン酸ナトリウムの溶液中で、標的となるたんぱく質(リゾチーム)と試薬を相互に拡散させて結晶化する「カウンターディフュージョン法」を使って細い管の中でたんぱく質を結晶化した。その後、射出した結晶を切り出してカルシウムの溶液に混ぜると、アルギン酸のゲルに包まれたファイバー状のリゾチーム結晶が得られた。
特殊な技術は要らず、射出の際の流速などの制御も不要。ゲルで保護した結晶を純水に浸し、結晶内部にはアルギン酸が染み込んでいないことを確認した。保護なしの結晶と同様に、薬の候補となる化合物を結合させるソーキング実験やX線結晶構造解析に適用できることも実証した。保護によりたんぱく質結晶の輸送や取り扱いが容易になり、創薬スクリーニングなどの効率化が見込める。従来、ハイドロゲル中でたんぱく質を結晶化する手法はあったが、ゲル中での結晶化は難しく扱いにくいなどの欠点があった。
開発手法は結晶化後にゲルで保護するため、結晶化条件を変える必要がなく、多様なたんぱく質を取り扱える。
薬はたんぱく質の形に薬の分子がはまることでその働きを変え、病気を治す。たんぱく質のX線結晶構造解析は近年、0・1ナノメートル(ナノは10億分の1)以下の高い分解能で解析が可能。
だが保護していない結晶はもろく、結晶の質が低下して構造解析が困難になるなどの課題がある。
日刊工業新聞2022年9月7日
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