Pages

Sunday, December 4, 2022

フリーランス保護 道半ば ハラスメント被害…法の対象外 半数相談せず - 読売新聞オンライン

 フリーランスとしての働き方が広がる中、セクハラやパワハラ被害が問題となっている。雇用された労働者に対しては、法律で企業に被害防止が義務づけられているが、フリーランスは対象外。仕事を失う不安などから被害者の半数近くが泣き寝入りしているとの調査結果もある。政府はフリーランスを保護する新法を制定し、ハラスメント対策も盛り込む考えだが、実効性が課題となる。(苅田円)

 2020年6月に施行された改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)は、企業にパワハラを防止する対策を講じるよう義務づけている。セクハラについても、男女雇用機会均等法で企業に防止義務が課され、労働契約法は会社に労働者が安全に勤務できるよう配慮する義務を定めている。

 しかし、いずれも対象は企業が雇用した労働者で、企業などから業務委託を受けて働く個人事業主は対象外だ。

 政府は、農林水産業以外で、店を持たず、従業員を雇用していない個人事業主をフリーランスと呼び、20年時点で462万人に上ると試算。ITエンジニアや配達員、デザイナーなど職種は幅広い。政府はその活用を成長戦略に位置づけているが、トラブルも起きている。

 一般社団法人「プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会」などがフリーランス1218人を対象に行った19年の調査では、36・6%がセクハラを受けたことがあると回答。パワハラは61・6%が経験していた。「キスされて拒否すると、仕事がなくなった」「連日人前で長時間 叱責しっせき された」などの声があり、被害に遭った人の45・5%が、仕事に支障が出ることなどを恐れ、誰にも相談していなかった。

 政府は昨年3月に示したフリーランスに関する指針で、実質的に企業の指揮命令下にあれば、労働法令が適用される場合があると明記。さらに労働環境を整備する法案を今国会に提出する方針だ。

 法案は、契約時に企業に業務内容や報酬を明示するよう義務づけることが柱だ。政府は今年9月にパブリックコメント(意見公募)を実施した際、ハラスメント被害についても、企業に適切に対応する体制整備を求めることなどの方向性を示していた。しかし、与党・自民党での議論に時間がかかり、法案提出のメドはたっていない。今国会で成立するかは不透明な状況だ。

 同協会の平田麻莉代表理事は「法案を早期に成立させ、ハラスメント防止を企業に義務づけた上で、被害を申し出る時の匿名性に関する配慮や、不利益を被らないようにする措置も導入してほしい」としている。

 鎌田耕一・東洋大名誉教授(労働法)の話「国が法整備に乗り出したことは評価できるが、フリーランスが声を上げづらい状況はすぐに変わらない。相談体制を充実させるなど実効性のある制度を作ることが重要だ。企業側もフリーランスと接する社員への研修を進めるなど意識を変えていくことが必要だ」

 セクハラ被害を経験した東京都の元フリーライターの女性(20歳代)が取材に応じた。

 女性は2019年3月、都内でエステを経営する男性からホームページ(HP)の記事を執筆する仕事の依頼を受けた。取材のための施術体験で下半身を触られたり、キスを迫られたりしたが、フリーライターの仕事だけで生計を立てていきたいと、我慢してきた。

 女性は半年間にわたって複数の記事をHPで公開したが、「記事の質が低い」などとして報酬は支払われなかった。パソコンに触れると指が震えるようになり、契約を打ち切った。

 女性は20年7月、男性とエステの運営会社を相手取り、未払いの報酬とセクハラに対する慰謝料など約590万円の支払いを求めて東京地裁に提訴。今年5月の判決は、女性は実質的に会社の指揮監督下にあり、会社側に安全配慮義務があるとして、約190万円の支払いを命じ、確定した。

 原告側によると、フリーランスのセクハラ被害は訴訟になることも珍しく、企業側の安全配慮義務違反を認定する判決は異例という。女性は「フリーランスとして働くならこんなものだとずっと耐えてきた。被害を言い出せない人はたくさんいるはず」と訴えた。

Adblock test (Why?)


からの記事と詳細 ( フリーランス保護 道半ば ハラスメント被害…法の対象外 半数相談せず - 読売新聞オンライン )
https://ift.tt/6PoIMgD

No comments:

Post a Comment