ペットとして人気の犬や猫。人気が高まる一方で、飼い主の事情などで捨てられるケースもあります。そうした捨て犬や捨て猫は引き取り手が見つからなければ、施設でやむなく殺処分されてしまうことを知っていますか。旭川市では過去に年間600匹以上の犬や猫を殺処分していた時期がありましたが、おととしから2年連続でゼロを達成しています。 (旭川放送局 山中智里)
保護犬・猫と新しい飼い主をつなぐ
旭川市中心部にある動物愛護センター「あにまある」。捨て犬や捨て猫などを保護して、新しい飼い主に譲渡する活動を行っています。
私が取材でセンターを訪れた日、保護されている猫を見に来た女性がいました。出会った瞬間、「ミャー」という鳴き声をかけられると…。
女性
「すごくかわいいですね。この子を希望したいです」
新しい飼い主が決まった瞬間です。
女性
「子猫をしっかり大きくして、幸せにしたいと思います」
年間300匹以上もの犬や猫を保護する「あにまある」。収容してすぐにシャンプーからワクチン接種、去勢手術までを一度に済ませます。わずかな体調の変化があっても、専属の4人の獣医師が見逃しません。ここまで健康状態にこだわる理由を、職員の大竹克幸さんに尋ねてみると…。
あにまある職員 大竹克幸さん
「しっかりと世話をして体調を管理することが、新しく飼い主になる人へのPRになり、譲渡につながりやすくなっていると思う。犬や猫に手間をかけられるのが『あにまある』の強みだ」
年間600匹以上…“殺処分施設と割り切っていた”
今でこそ円滑な譲渡ができている「あにまある」ですが、苦い過去があります。前身の施設「嵐山犬抑留所」。山奥にある抑留所の収容室は1室のみ。収容できるのはわずか6匹で、引き取り手のいない犬や猫はそこで殺処分されました。その数は年間600匹以上にものぼりました。
あにまある職員 大竹克幸さん
「基本的に週に1回、殺処分の日があったが、頭数によっては入ってきてその日のうちに殺処分されるケースもあった。抑留所に収容された時点で殺処分されることはほぼ確定している状態。もうここは殺処分するための施設だと割り切ってやっていた」
命を守る施設でありたい
時代は流れ、動物愛護の機運が高まっていくなか、旭川市は「中核市」になったことをきっかけに、平成24年(2012年)「あにまある」を開設。“殺処分するための施設”から“命を守る施設”への転換をはかりました。
職員たちの手厚い管理体制に加え、市内中心部の立地とあって市民が気軽に立ち寄れ、多くの譲渡につながっています。開設以来10年間、犬の殺処分はゼロ。保護される数が多いため殺処分されるケースが多い猫もおととし(2020年)からゼロを実現しています。
あにまある職員 大竹克幸さん
「手厚くケアすることで、犬や猫がもらわれやすくなってくる。そうなると施設に残っている子たちに手厚いケアができ、好循環が生まれている。殺処分ゼロを実現して『やったー!』という単純な喜びではなくて、日々世話をしている子が譲渡につながったという喜びがいちばん強い」
保護される猫そのものを減らす「TNR」活動も
「あにまある」では、保護活動のほか、収容される猫そのものを減らそうと、地域の野良猫の繁殖を防ぐ「TNR」と呼ばれる活動も行っています。
Trap(わなで捕獲)、Neuter(去勢手術)、Return(元に戻す)の頭文字を取ったこの活動は、地域住民から「野良猫がいる」と連絡を受けた職員が現地へ。そこで猫を捕まえて去勢手術を行い、元いた場所に戻します。センターでは、平成25年(2013年)からことし11月までに1600匹以上を去勢し、繁殖を防いできました。
進む高齢化 新たな問題が
こうした活動により「殺処分ゼロ」を実現した一方で、いま、センターを悩ませているのが高齢化社会ならではの問題です。
あにまある職員 大竹克幸さん
「いちばん多いのが高齢者の飼い主がペットを手放さなくてはいけなくなったケース。理由は長期入院や高齢者施設への入居など、中には本人が亡くなるパターンもある」
高齢化はヒトだけではなく、動物たちの寿命も獣医学の発展で大幅に延びています。飼い主がいなくなり、取り残されてしまう犬や猫が今後増えていくことが懸念されます。「あにまある」の大竹さんは、飼い主に対して、ペットが命を全うするまで面倒をみるという責任を自覚すること、そして、事前に準備や対策をしてほしいと訴えています。
あにまある職員 大竹克幸さん
「自分に何かあったときに代わりに飼ってくれる人、そのあとずっと面倒をみてくれる人を探しておく。それは飼い主の責務の一つだと思う。どれくらい大きくなるのか、運動量はどれだけ必要なのか。何歳くらいまで生きるのか。飼う前に調べてほしい。飼った以上は責任が発生するので、自分で飼うことができるのか、よく考えてほしい」
取材後記
「責任感が強い飼い主ほど、前もって譲渡先などを準備しないことが多い」。大竹さんからこう聞いたとき意外に感じました。“飼い主の責任感の強さ=ペットを大切に思う気持ち”と思っていたからです。大竹さんによると、責任感の強さゆえに「自分の力だけでペットの面倒をみなければ」と思い詰めてしまうようです。飼い主の本当の責任とは何か。私が思うに“ペットの幸せを最優先に考えること”なのではないでしょうか。これは決してお年寄りだけではなく、すべての飼い主に求められることだと思います。万が一を想定した準備をお願いしたいです。
ことし(2022年)もあと1か月を切りました。「あにまある」は「殺処分ゼロ」を維持。きょうも小さな命を守り続けています。
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