菊川市を代表する特産品の深蒸し菊川茶が農林水産省の地理的表示(GI)保護制度に3月中に登録される見込みになった。市茶業協会が登録申請してから間もなく3年。GI登録を追い風にしてブランドを確立し、消費拡大につながるよう茶業関係者が一丸となってPRに努めてほしい。
GIはその地域ならではの環境で長年育まれてきた特産品の名称を、地域の知的財産として国が保護する制度。生産地や生産方法などの基準を満たせばGIマークを使用して販売でき、不正使用された場合は国が取り締まる。1月末時点で全国で121産品が登録されている。
深蒸し菊川茶は水色が濃厚な黄緑色で、渋みが少なくまろやかな味わいが特徴。同協会によると、山あいに比べて気温が高く、日照時間が長い菊川市では茶葉が肉厚で渋みが強かった。渋みを抑えるため、1950年ごろから市内の農家が製造技術を研究し、茶葉を長い時間蒸す製法を生み出した。
同協会の黒川浩丹事務局長(65)は「GI登録を深蒸し菊川茶の知名度を高める起爆剤にしたい。生産者や茶商、農協、行政が同じ方向を向いてブランド化を推進する必要がある」と強調する。登録後は広報活動を強化する方針で戦略を練っている。
一方で、GI産品の価値が消費者に認知されているとは言い難いのが現状。農水省は課題を踏まえ2022年11月、GI保護制度の運用を見直した。これまでのGI産品は小規模な地域で生産される伝統野菜などに偏り、市場で消費者が目にする機会が限定的だった。
20年に登録された「西浦みかん寿太郎」を生産する沼津市の西浦柑橘[かんきつ]出荷部会の矢岸正敏部会長(69)は「将来にわたって国からお墨付きをもらえてよかった。生産者が品質を保つための意識付けにもなる」と利点を話す。だが、「一般の人がGIを知っているかは疑問。まだ産地の活性化にはつながっていない」と本音も漏れる。
深蒸し菊川茶は登録されればお茶としては県内初。就農人口の減少や価格低迷の長期化など課題が山積する中、業界にとって新茶期を前に明るい話題になる。登録は国内外への販路開拓や有機栽培茶への転換など新たな挑戦の足掛かりになるはずだ。深蒸し茶発祥の地として底力を見せてほしい。
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