交番や警察署で、家に帰れなくなった認知症の高齢者が保護されるケースが相次ぐ。早く家に帰してあげたいけれど、家族もなかなか迎えに来られない。そんなケースを数多く見てきた元警察官2人が、この春から認知症の家族をサポートする事業を始めた。
2人は今年3月に京都府警を退職した中邨(なかむら)よし子さん(60)と竹内雅人さん(59)。退職と同時に、警察署などに保護された認知症の高齢者のお迎えを代行する一般社団法人「つなぎ」を立ち上げた。
代表理事を務める中邨さんは、地域のパトロールや防犯対策、子供や高齢者の安全対策を担う業務を長年担ってきた。認知症の高齢者を保護することも多かった。住所が遠方、仕事が忙しいといった事情で、家族がなかなか迎えに来られないケースもよくあった。「老老介護」でへとへとになっている高齢者の家族もいた。
「保護をすると2、3人の警察官でサポートをするが、認知症の高齢者にとって、警察署はリラックスできる場所ではない。はやく家に帰してあげたいが、家族の生活もあり、すぐに迎えに来られない事情もわかる。そのジレンマに悩んでいた」と中邨さん。
自身も仕事をしながら、両親が入院する病院に通った経験がある。「信頼できる人に迎えを頼めればご家族の気持ちも楽になるのでは」と考えたという。
竹内さんは盗犯担当の元刑事。中邨さんと竹内さんは警察署で防犯イベントなどを一緒に手がけたこともあった。中邨さんが竹内さんに考えを話すと、竹内さんも当直勤務の時、高齢者を保護して同じような経験を何度もしてきたと意気投合した。
調べてみると、警察署へお迎えをするサポートサービスはないようで、「退職後も地域で役に立てるのでは」と感じたという。休日を使い、「認知症の人と家族の会」へ聞き取りをしたり、大学病院を訪ねて認知症の勉強をしたりと準備を重ねてきた。
中邨さんは「元警察官ということで、警察署と家族との橋渡し役も安心して任せてもらえるのではないか」と話す。
今や認知症高齢者は推計600万人以上。今後も増え、それに伴い「ひとり歩き」の懸念も増す。
京都府警人身安全対策課によると、昨年、行方不明などで保護した人の数は、府内で6636人。そのうち、58・6%の3887人が65歳以上で、認知症やその疑いのある人が大半だという。10年前の保護件数は4906人、うち65歳以上は36・3%の1780人だった。
同課の担当者は「高齢化に伴い、65歳以上の割合は年々増加傾向だ」と話す。
認知症に詳しい京都府立医科大の成本迅教授(精神医学)は、「認知症の初期では、急に家に帰る道がわからなくなり道に迷うことが増える。また、症状が進んでいくと、昔の生まれた家に帰ろうとして出歩くこともある」と話す。
地域のつながりがある場合は、家族が近くにいなくても近所の人が声をかけたりできるが、街中では高齢者が「孤立化」しているのが特徴的だという。「家族だけで支えるのも限界で、今回の取り組みがモデルケースになるかもしれない」と期待する。
法人名の「つなぎ」には二つの思いを込めた。一つは警察署や家族との間の橋渡し。もう一つは、このようなサービスが、行政や事業者などで広がり発展するまでの「つなぎ」になること。中邨さんは「介護者にこのような悩みがあることをまずは認知されてほしい。そして、介護はまだまだ家族の問題だと思われがち。周辺に頼れることが普通になってほしい」。
送迎サポートなどの利用は事前登録制(データ管理費など入会金2万2千円)で、利用回数などにより料金は変わる。詳細な問い合わせは一般社団法人「つなぎ」(075・777・9758)へ。(才本淳子)
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