「あまり仕事内容を知られていないが、大きな犯罪を起こすようになる前に、その芽を摘む仕事と思っている」
罪を犯した人や非行少年の立ち直りを後押しする保護司になって二十年余り。農協を早期退職したのを機に、知人の保護司に誘われ、五十三歳の時に引き受けた。農業をしながら、未成年者を中心に百人以上と関わってきた。
保護司は非常勤の国家公務員だが、交通費などが支給されるだけのボランティア。主な仕事は、元受刑者や非行少年との面談をはじめ、刑務所や少年院に入っている人の釈放後の受け入れ態勢の調整、犯罪予防の啓発活動と多岐にわたる。
「農協時代から知っていたし、抵抗感や警戒感などはなかった」という。面談は一人につき月二回程度で、三十分ほどになることが多い。「最初のうちはどう接すればいいのか分からず、こっちが面接されてる気分だった」と振り返る。
どうすれば信頼して話をしてくれるのか、考えながら接している。「真面目にやらなきゃ」「何か困ったことは」と声をかけ「少しでいいから貯金をしよう」と生活のアドバイスもする。「上から目線にならず、なるべく寄り添う姿勢が一番大事。テレビの話題など雑談を交えたり、自分の若い時の体験を話したりする」
二十年以上、少年との面談を続けてきたが、素直な態度で応じる少年がほとんどという。「昔も今も窃盗が多い。昔に比べ、うち解けやすい子が多くなったが、さほど大きく変わった印象はない」と感じている。
ただ、面談していた保護観察期間中に罪を犯し、再び逮捕された少年もいた。少年院から届いた手紙には「うそをついていました」と謝罪の言葉がつづられ「改心したので、出たらまた行きたい」などと書かれていた。その後は更生し「彼女ができました」と報告もあった。「良い報告をもらった時は、何事にも代えがたい瞬間。やってきて良かったと思う」と語る。
「一人一人をみると、みんな素直で良い子。家庭や環境に問題がある場合が多く、特に悪い交友関係があると、だめになってしまう」と話す。「悪い子はいない。社会や大人がそうさせている」というのが信念だ。「だから社会や大人が受け入れ、目が届くようにすれば、もっと犯罪は減らせる」(宮本隆康)
<保護司> 刑務所からの仮出所者や、非行で保護観察になった少年らとの面談などが主な業務。任期は2年で、再任を重ねれば78歳に達するまで活動できる。全国に約4万5000人いるが、なり手不足で定員を下回っており、法務省は制度を見直す有識者検討会の立ち上げを決めている。
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