欧州議会は4月17日、森林破壊に由来する一次産品および関連品の域内輸入を2024年から禁止するEU法案を賛成多数で可決した。欧州議会は輸入による森林破壊加担を禁じる世界初の法と自賛した。
このEU法案は21年11月に欧州委員会が提案し、欧州議会が22年秋に対象品目を追加、年末にEU加盟国の合意を得ていた。気候変動を抑え、生物多様性を保護するために森林破壊の進行を阻止するのが目的。禁輸になるのは、20年12月以降に森林を破壊して生産されたカカオ、コーヒー豆、パーム油、大豆、牛肉、木材/木炭、家禽類、ゴム、革、印刷紙など。25年からはトウモロコシも対象に含めることも検討中だ。これらの産物をEU域内に輸入する業者は原産地を証明するトレーサビリティ証書の税関提出を義務づけられる。税関はGPSや衛星写真を確認して2020年末以前に森林があったか否かを確認する。税関検査は原則、無作為抽出で行われるが、インドネシアやブラジルなどリスクの高い国からの輸入品に重点を置くようだ。違反した場合は輸入額の4%までの罰金を科される。
世界自然保護基金(WWF)の21年の調査では、一次産品等輸入による間接的な森林破壊への加担割合は、中国の27%に次いでEUは16%(主に大豆とパーム油)と2位(3位はインドの9%、4位は米国7%)であるため、EUは対策を模索していた。EU市民の世論調査でも森林破壊への加担を拒否する意見が多数を占めるようになっているという。
環境保護団体グリーンピースは、この規則は「第1歩にすぎない」とし、森林だけでなく南米のサバンナなども対象にし、森林破壊開発へのEU諸国の銀行融資も含めるべきとしている。国連食糧農業機関(FAO)は、1990年から2020年の間に世界中で4億2000万ヘクタールの森が破壊されており、熱帯原生林だけでなく植林された森林も含めてすべての森林を保護することが急務としている。
今回のEU法の決定は画期的ではあるが、税関によるトレーサビリティ確認がうまく機能するかについては疑問も残る。たとえばル・モンド紙3月1日付の報道によると、木製家具や本、紙コップなどに「責任ある森林管理認証」とよく記してあるが、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)の調査によると、その認証を与える監査会社のなかには企業の違法行為の隠蔽に加担するものもあるという。せっかくの今回のEU法が効率よく適用されることを期待したい。(し)
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