[ラウニオン(フィリピン北部)、2月7日 ロイター」 - フィリピン北部のラウニオン州には手つかずの自然が残る砂浜が広がっている。建設労働者ジョニー・マンルゲイさん(55)は毎晩ここで、木のステッキとバケツを携え、ヘッドランプを装備して、ウミガメの卵を探して回る。
マンルゲイさんはいとも簡単に営巣地を見つける。ウミガメやその卵を見つける方法は、幼い頃から祖父にたたき込まれた。当時は商品として売ってしまうか、自分たちで食べていた。マンルゲイさんらがしていたことは、「密漁」だった。
だが、卵を盗む日々は過去となった。現在、マンルゲイさんはそのスキルを活かし、絶滅危惧種であるヒメウミガメを保護する活動を支えている。ラウニオン州内の砂浜は、ヒメウミガメのお気に入りの営巣地だ。
「この仕事が好きになった」と2匹の犬を連れたマンルゲイさんは言う。「かつては、密漁が違法だということも、ウミガメの卵や肉を食べてはいけないことも知らなかった」
マンルゲイさんは卵を1つずつ注意深くバケツに移し、営巣地の砂も一緒に入れ、砂浜での保護プログラムを主導する団体「CURMA」に届ける。
フィリピン諸島では、アオウミガメ、タイマイ、アカウミガメ、オサガメ、ヒメウミガメと合計5種のウミガメが確認されているが、いずれも絶滅危惧種に指定されている。
タガログ語で「ポウィカン」とも呼ばれるウミガメは、卵や肉、甲羅を求める人間に捕獲されるほか、売買や狩猟 、生息地の消失や気候変動といった脅威にもさらされている。
だが、2009年に始まった保護活動では、報酬や研修を提供することでウミガメ密漁者を味方につけ、何千ものウミガメやその卵が取引市場や食卓に向かうことを防いでいる。
CURMAの事業担当ディレクターを務めるカルロス・タマヨさんは、「密漁者たちと話してみたら、彼らにとっては密漁が単に生計手段の1つでしかないことが分かった」と話す。「彼らには選択肢というものがなかった」
<コロナ禍でウミガメの産卵数は増加>
ウミガメは巣穴1カ所につき、平均100個の卵を産む。巣穴の数は1シーズン当たり35-40カ所。産卵シーズンは10月から2月まで続く。
タマヨさんはさらに、新型コロナウイルスによるパンデミックが始まって最初の1年は、この数が2倍に増えたと話す。当時はコロナ禍により人間が屋内に引きこもったことで、多くの面で動物たちの活動が回復していたという。
「たとえば昨シーズンだけでも、75カ所の巣穴を確認し、9000匹近い赤ちゃんを海に放流した」とタマヨさんは言う。
ボランティアは、採取した卵1個につき20ペソ(約50円)を受け取る。卵を売ることで得られる収入の4倍の額だ。卵はCURMAのふ化施設に運ばれ、安全なエリアに埋め直される。
かつては密漁者だったジェシー・カバグバグさん(40)は、ウミガメの肉や卵を食べて育ったという。主として漁業により生計を立てている家族にとって、卵の採取により得られる追加収入は非常にありがたいと話す。
「報酬は食費や電気代の足しになる。運良くたくさんの卵を見つけたときには貯金して、三輪バイクを購入できた。漁に出られないときにはこれを使って(乗客を運び)、もう1つ別の収入源になっている」
妻と7歳の息子を連れてラウニオン州バクノタンの砂浜を巡回するカバグバグさんは、昨年10月以来、1000個以上の卵をCURMAに届けた。
「研修を受けて、自分たちがやって来たことが違法で、ウミガメたちが絶滅危惧種であることを知り、密漁は止めた」とカバグバグさん。
解き放たれた青灰色のウミガメの赤ちゃんがよたよたと懸命に砂浜の斜面を下り、海へと戻っていく光景を一目見ようと、観光客たちも集まってくる。その光景は、カバグバグさんに無上の喜びをもたらすという。
「本当に誇らしい。簡単なことではないから、近所の人たちまで私がやったことを評価してくれる。『ポウィカン』の保護に貢献できるようになって幸せだ」
(Eloisa Lopez 記者、翻訳:エァクレーレン)
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