ブロックチェーン技術に基づく電子的な決済手段である暗号資産は、誕生から15年を経て、金融の世界で一定の地位を占めるようになった。金融庁は、暗号資産の取引のための法整備で利用者保護を強化する一方、将来の健全な発展を見越したイノベーティブな活用の支援や、国際的な議論にも参画している。
暗号資産は、ブロックチェーン技術を用いて電子データのみで取引される決済手段で、日本円や米ドルなどの法定通貨とは異なり、国家の信用力を裏付けにしていない。2020年に金融庁が変更するまでは「仮想通貨」と呼ばれていたものだ。金融庁では、暗号資産を規制し、利用者と金融システムを保護するとともに、その健全な利活用に向けて様々な活動を行っている。その両側面から、これまでの経緯を振り返りつつ、話を聞いた。
暗号資産の広まりとともに
規制の整備が進む
暗号資産の始まりは2008年10月、身元を明かしていないエンジニアの「サトシ・ナカモト」氏が、ブロックチェーンを使った分散型決済を可能にする技術についての論文をネット上で公表したこと。そのアイデアに賛同するボランティアが開発プロジェクトに加わり、2009年1月に世界で最初の暗号資産、ビットコイン(BTC)の運用が始まった。
当初は限られた人々の間でやり取りされていたBTCだが、2013年に発生したキプロスの金融危機をきっかけに「通貨」として注目されるようになった。この時、EUはキプロスに金融支援を行ったが、その条件として銀行預金への課税や預金引き出し制限、海外送金の規制などを求めた。キプロスの銀行にお金を預けていた預金者は、それを自由に動かせなくなったのだ。そこで、政府の規制から外れていたBTCを利用して、資本規制から逃れる預金者が出、BTCの価格が上昇した。
日本では2014年に、暗号資産交換業者マウントゴックスで大量のBTCが盗まれる事件が発生。被害額の大きさから一般の人にもBTCが知られるようになる契機となった。盗難にあったのは顧客分75万BTCと自社保有分10万BTC、当時のレートで470億円にのぼる。同社のサーバーが何者かにハッキングされたことが原因で、BTCと預かり金の大半が流出、12万7000人が被害を受けた。マウントゴックスは事件が公になった直後に破産手続きを開始したが、その後のBTCの値上がりにより弁済が可能になったため、2018年に民事再生法手続きに移行している。
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