２０１６年のリオデジャネイロ五輪開会式で入場行進する北朝鮮選手団。東京五輪不参加表明は各国にも衝撃を与えた【拡大】
北朝鮮体育省は６日、ウェブサイト「朝鮮体育」を通じ、同国オリンピック委員会が３月２５日に開いた２０２１年総会で、東京五輪への不参加を決めたことを明らかにした。新型コロナウイルス感染症から選手を保護するためとしている。東京五輪に参加しないと表明した国は初で、日本政府は確認を急ぎ、大会組織委員会も対応方針の検討に入った。このタイミングでの不参加表明は日朝関係の冷え込みも背景にありそうだ。
北朝鮮が新型コロナのパンデミック（世界的流行）を理由に東京五輪への不参加を表明。国際パラリンピック委員会（ＩＰＣ）も北朝鮮から東京大会の不参加を伝えられたと明らかにした。
医療体制が脆弱な北朝鮮は国内に感染者はいないとする一方、コロナを極度に警戒。中国で感染が拡大した昨年１月末から国境を封鎖している。
ただ、金正恩朝鮮労働党総書記は２０１８年、平壌で国際オリンピック委員会（ＩＯＣ）のバッハ会長と会談し、北朝鮮側は東京五輪や２２年北京冬季五輪に「必ず参加する」と表明していた。
今回の突然の発表に大会組織委員会の関係者は「寝耳に水だ」と驚きを隠せない。丸川珠代五輪相は「詳細を確認している」とし、東京都の小池百合子知事は「まだ北朝鮮の態度については実際に確認していない。その上で対応したい」と述べるにとどめた。一方、ＩＯＣは「（北朝鮮から不参加の）正式な申請を受け取っていない」とする談話を発表した。
北朝鮮はこれまで五輪参加カードを日本や韓国、ＩＯＣに対する政治的駆け引きに使用しており、今回も政治的思惑があるのではとの見方も出ている。実際、菅政権は日本人拉致問題の解決に向けても東京大会を対話の機会と位置付けていたが、対応の練り直しを迫られた。
北朝鮮は１９６４年東京五輪も不参加に終わっており、夏季大会で参加見送りとなれば南北で対立した８８年ソウル五輪以来、３３年ぶり。東京大会開幕を約１００日後に控え、組織委関係者は「北朝鮮の対応で『東京五輪は危ない』と思ってしまう国が他にも出てくるかもしれない。具体的な対策を早急に説明すべきだ」と指摘した。日本政府は他国への波及だけはなんとしても避けたいところだ。
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