英国政府は9月18日、卸売ガス価格高騰の背景と英国のエネルギー供給事業者、産業、消費者を保護するための政府の取り組みを発表した。
政府は世界的にガス価格が高騰している要因として、(1)世界的に新型コロナウイルス関連の規制が解除され、経済活動が再開するにつれ、世界のガス需要が増加していること、(2)(2020年に)寒い冬と重なったことでガスの備蓄が少なく、ガス市場がタイトとなったこと、(3)特にアジアでの液化天然ガス(LNG)の需要が高いこと、(4)「新型コロナ禍」で2020年に予定されていた重要な保守計画が延期され、2021年の計画と重なったこと、などを挙げた。
英国への影響について、政府はこの冬のガス供給に緊急事態は予想していないとした上で、エネルギー安全保障は、政府にとって絶対的な優先事項で、エネルギー部門の規制機関であるガス・電力市場局(Ofgem)およびガス供給事業者と緊密に協力して、需要と供給を監視し対応しているとした。
英国のガス供給源は、国産が約48%(2020年)、ノルウェーからの輸入が約30%で、2020年のガス需要は、38%が家庭用暖房、29%が発電、11%が産業と商業用となっており、2,200万世帯以上がガス供給網に接続されている。
クワシ・クワルテング・ビジネス・エネルギー・産業戦略(BEIS)相は9月20日に政府対応について声明を議会で発表しており、消費者を保護することが第1とした上で、以下の3つの原則を強調した。
- 政府は経営危機に陥った企業を救済することはない。
- 消費者、特に最も弱い立場にある人を価格の高騰から保護しなければならない。
- エネルギー市場の競争が失われ、大手数社の独占状態に戻ることがあってはならない。
また、ビジネス・エネルギー・産業戦略省は9月23日付で、消費者保護の取り組みとして、Ofgemによるエネルギー価格上限(Energy Price Cap)の設定や、低所得者や公的年金、社会保障給付を受けている人などのエネルギー費用負担をさまざまな方法で支援している旨を紹介した。
英国では、9月に入り、小中規模エネルギー供給事業者が相次いで経営破綻した。Ofgemは、大手エネルギー供給事業者を、経営破綻した事業者の顧客の受け入れ先として選定し、エネルギー供給が滞ることがないように努めている。クワルテング・ビジネス・エネルギー・産業戦略相は23日付の声明で、今後数週間でさらに多くの事業者が市場から撤退する可能性があるとしている。
(宮口祐貴)
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