米国のバイデン政権は9月6日、トランプ前政権下で承認されていたアラスカ産業開発輸出公社(AIDEA)によるアラスカ州での石油・ガス採掘のリース契約をキャンセルすると発表した。
同リース契約は、9つの区域で10年間にわたる石油・ガス採掘を目的とするものだが、2021年1月の大統領令を踏まえて、2区域での開発がキャンセルされていた。残る7区域についても、2021年6月に「リースを裏付ける基礎的な記録に複数の法的欠陥がある」とする内務長官令により一時停止処分を受けていた。今回キャンセルしたのはこの一時停止されていた7区域でのリース契約だ。
リース解除の理由として、内務省は、(1)北極圏では地球上の他の地域の2倍以上の速さで温暖化が進んでおり、この地域の生態系を保護する措置が必要なこと、(2)合理的な代替案の検討や温室効果ガス(GHG)排出量の定量化といった分析が不十分だったことなど、多くの基本的な法的欠陥に基づいてリース販売が行われていたことなどを挙げている。
これと同時に、アラスカ先住民が多く住むアラスカ国家石油保留地(NPRA)の環境保護を強化する規則案も発表した。この規制が適用された場合、NPRA内の特別区域に指定された約1,300万エーカー(約5万2,600平方キロ)の区域で新規の石油・ガス採掘のリースが制限され、NPRAの40%に上る1,060万エーカー(約4万2,900平方キロ)では新たな土地の賃借が禁止されることとなる。この規制案は今後、パブリックコメントが実施される。
この件に関して、ジョー・バイデン大統領は声明で「北極圏では、気候変動により2倍以上の速さで温暖化が進行しており、この地域をあらゆる世代にわたって保護する責任がある」とし、今回の決定が北極圏の土地と野生動物の保護に役立つとともに、アラスカ先住民の文化や歴史などを尊重することにもなると述べ、その意義を強調した。また「気候変動の緊急性に対応し、土地と水を何世代にもわたって守るために大胆な行動をとり続ける」として、気候変動対策の積極的な姿勢をあらためて示した。
今回の決定に対して、米国石油協会は「連邦所有地の石油・ガスのリースに関して、憂慮すべき前例となる。安価で信頼性の高いエネルギー生産には、長期的な投資をサポートする明確かつ一貫した政策が必要」「州内および全米の国内エネルギー生産に関する将来的な見通しをしっかりと確立することで、アラスカのコミュニティーと経済を擁護することを強く求める」と反対する声明を出している。
(加藤翔一)
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